ヴェルディ 歌劇《イル・トロヴァトーレ》全曲 [DVD] の感想

1985年夏、イタリアのヴェローナにあるかつての古代ローマ時代の円形闘技場で現在は屋外オペラ劇場となっているアレーナ・ディ・ヴェローナ（Arena di Verona）での「イル・トロヴァトーレ」ライブ公演の貴重な映像。カラヤンと公然と衝突するなど数々のエピソードで知られる「最後のプリモ・ウォーモ（花形）」フランコ・ボニゾッリの火の出るような熱唱が聴ける。「俺こそがマンリーコ」と言わんばかりの堂々たる歌唱には度肝を抜かれる。デル=モナコと比較されるのもよく分かる。エキサイトする聴衆に第3幕最後の白熱のカバレッタ「見よ、恐ろしい炎を」をアンコールで歌うボニゾッリが凄い。演奏はレイナルド・ジョヴァニネッティ指揮、アレーナ・ディ・ヴェローナ管弦楽団＆合唱団。

レオノーラには英国のソプラノ、ロザリンド・プラウライト。ジュリーニのDGの名盤でも同じ役を歌っている。彼女にとってこれがヴェローナでのデビュー。英国の気品と嫋やかな風情を併せ持つ美しい舞台姿で魅了する。しかもイタリアの熱気にあふれる歌唱は聴きごたえ十分。アズチェーナはこの役をやらせたら右に出る者のないフィオレンツァ・コソット。ルナ伯爵のジョルジョ・ザンカナーロがまた素晴らしい。風格を感じさせる歌い回しで堂々たる威厳で他を圧している。聴衆のブラヴォーと拍手もボニゾッリに勝るとも劣らない。

豪華な歌手陣に較べて舞台は簡素なものだが、美しい伝統的な衣装と144分の白熱のドラマが観れる（聴ける）のが素晴らしい。1978年のカラヤン盤と並ぶ名盤です。