イノベーションを実行する―挑戦的アイデアを実現するマネジメント の感想

イノベーションというと「ビッグなアイディア探し」がメインテーマになることが多いが、本書はその先にある「実行」がメインテーマ。まず、イノベーションを「あなたにとって新しい、そして結果が不確定なすべてのプロジェクト」という広い視点でとらえ、それを足場にイノベーションのパターンが整理される。これだけでも、自分が実行すべき（取り組むべき）課題について一気に見通しが良くなる。

本書では、特にイノベーションの実行が困難な「力のある健全な既存の継続事業（パフォーマンスエンジン）と並行して新たなイノベーションを実行するパターン」を取り扱っている。はじめに、このパターンで取り組むべき２つの課題（「組織の見直しとプランニング」と「厳密な学習プロセス」）を明らかにし、それぞれ処方箋が提供される。

全体は２部６章構成：

■ 第一部「チームづくり」：　第一の課題「組織の見直しとプランニング」の処方箋
プロジェクトチームを「共通スタッフ（パファーマンスエンジンのリソース）」と「専任チーム」の共同事業として立ち上げる。「パフォーマンスエンジン」の限界がどこにあるのかを理解し役割分担を決める。専任チームに集められる人材は「組織の記憶」を克服できなければならない。共同事業の成功は「共通スタッフ」と「専任チーム」の健全なパートナーシップを維持するための管理が必要。

■ 第二部「規律ある実験」：　第二の課題「厳密な学習プロセス」の処方箋
イノベーションプロジェクトはさまざまな推測に満ちており、一部は失敗する。これは避けられない。許されないのはそこから間違った結論を引き出すこと、失敗から学習しないことである。この競争に勝つのは最も迅速に学習したものであり、正しい教訓を学びとるために必要になるのは３つの規律（「実験を整理し、形式化する」「仮説をブレークダウンする」「真実を追求する」）である。

末巻には付録としてイノベーション実行の助けとなる評価ツール（評価テンプレート）が４つと、さらに研究を深めるための参考資料が付いている。至れり尽くせりの実践の書。