ソクラテス以前以後 (岩波文庫) の感想

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タイトルソクラテス以前以後 (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者F.M.コーンフォード
販売元岩波書店
JANコード9784003368312
カテゴリ人文・思想 » 哲学・思想 » 西洋思想 » 古代・中世・ルネサンス

購入者の感想

エーゲ海沿岸(現・トルコ)に起こった自然学と、知への恋愛として自身の思索(ディアレクティケー=問答法)を「恋愛の情+知」という意味で造語(プロソピア)したソクラテスの営みは、インドのブッダ(生年はソクラテスの数年後でネパールに生まれた)の思想と重なり、二人の死後紀元前3世紀には、活発な交流が起き、多くのギリシャ王たちは仏教に帰依し、深い対話の記録も残されています。エーゲ海沿岸のギリシャ人とインド人は、ともにアーリア人と現地人の混血であることも親近性の理由と思われます。ついでに言えば、紀元前5世紀にう生まれたソクラテス(アテネ)とブッダ(ネパール・インド)と老子(中国)は、超越神を置かず、人間の一人ひとりの意識につく【根源的な実存論】です。

にもかかわらず、この本では、実存論的な書き出しはとても優れていますが、次第にキリスト教との同一性へと論はメタバシスを起こし、遂には、ソクラテスを含めてプラトン、アリストテレスもキリスト誕生後に生まれていたならば、キリスト教の教父になっただろう、と言われます。水と油を一緒にする!

確かにアリストテレスの「形而上学」第1巻の「自然学」では、すべての自然の変化には、四種類の原因があり、その重要な一つが「目的因」とされています(雨が降るのは穀物を成長させる目的があるからだ)ので、後のキリスト教が、唯一神(超越神)への信仰=神はそれぞれの目的をもって世界を創造したとする「物語」、を理論化するにあたり、アリストテレスの学問を換骨奪胎して用いたのは事実です。目的因という思想は、神の世界創造という物語にはうまく嵌ります。

しかし、著者がいうプラトンにも目的因があったというのは、後期、プラトンがピタゴラスに影響されて神秘思想になり、ソクラテス出自のイデア論(現代的に言えば「唯名論」で言語学の常識)を否定してから以後を推論しての著者独自の判断で、それには普遍性がありません。何の根拠も示さずにプラトンの目的因!?なる説を入れ込むのには呆れます。

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