フライト・ゲーム スペシャル・プライス [Blu-ray] の感想

カテゴリーとしてはハイジャック･アクションで間違いないのだが、本作の最大の特色はそのミステリー度にある。決してリーアム･ニーソンのアクション頼みではない、観客を巻き込むシナリオの巧みさが光る隠れた秀作だ。
最後まで犯人が全く判らない鮮やかな謎解き脚本と、それをアシストする大物俳優に依存しない配役により、第一級のサスペンスに仕上がっている。犯人はかなり緻密で頭が良く、なかなかボロを出さないから時間と共に手詰まりな焦燥感だけが募っていく。
何せリーアム以外は助演のジュリアン･ムーアしか知らないので、偏りなくカットを割られたら誰が犯人か推測すら出来ない。普通なら伏線やオヤッと思うカットで解りそうなものだかが、それが出来ないのだ！
しかも騙し討ちのような落ちでもないから上手い。観客は本当にリーアムと共に犯人を探す立場に立たされ、その緊張感が全編持続するので、かなり疲れること請け合い。だからこそラストは爽快で心地よい。
他に本作で感心したのは、主人公の人間としての描き方が影の部分を含めて丁寧で、それがシナリオと絡まる事でストーリーに厚みを与えている事。そのテイストはクリント･イーストウッド監督の“人間臭い意固地な中年”の味わいを彷彿とさせ、今後のリーアムの更なる円熟を期待させる。
俳優をズラリ揃えなくても、演技とアクション双方で圧倒的存在感の主演リーアムと表情だけで演じきれる燻し銀の助演ジュリアンの二人だけでも痛快作が撮れることを証明する、稀にみる練達度を味わえる傑作だ。