バッハ:パルティータ全曲 の感想

若き日の快演と思います。パルデイータ全曲二枚組新品500円を切る価格で入手。

全ての声部がよく歌い端正で自然にバッハの対位法の世界に浸れる素晴らしいパルティータである。音楽に流れるような歌心を求める方々には、お奨め盤である。

メロディー重視の音楽を中心に聴いていると、バッハ演奏で最もしっくりくるのはシフだと感じる。例えば、200曲近い教会カンタータ、マタイ受難曲、ヨハネ受難曲、ミサ曲、モテット等の声楽曲をバッハの中心に据えて聴く、あるいはヴァイオリンやチェロ等の旋律楽器、弦楽器を中心としたケーテン時代の作品やオルガン曲を聴き込む、古典派以降ならば弦楽四重奏を中心にした室内楽を愛好する方々には、シフのバッハ・ピアノ曲の演奏スタイルは合っていると思う。もちろん、巨匠ニコラーエワ(パルティータは入手できるだろうか？)を無視することはできない。抜群の譜読みの深さは圧巻であるが、曲によってはかなり個性的で好みの分かれるところであろう。一方で、マルカート奏法により音の透明感を重視するグールド系の演奏に魅力を感じる人は、シフではなく他の奏者が向いていると思う。バッハは多様な演奏スタイルを受け入れる作曲家であり、結局は聴く人の音楽の捕らえ方によって演奏を選ぶことになる。