英国王室史話〈上〉 (中公文庫) の感想

英国王室の開祖ウィリアム征服王からジョージ六世（エリザベス二世の父）に至る
9王家40代の英国王、女王の伝記です。上巻は征服王からエリザベス一世まで。征
服王以前のアルフレッド大王、エドワード証誓王、征服王に負けたハロルド二世な
どは扱われていない。王家の名称は、ノルマン王家からプランタジネット王家、ラ
ンカスター王家を経て現在のウィンザー王家にいたるまで何回も変わり、王家が途
絶えて外国から王を連れてきたこともありますが、どの王家もウィリアム征服王の
血統であることには変わりない。英国の王室は千年以上続いた世界でも屈指の旧家
といえるでしょう。

一口に英国といっても、その範囲は時代によって大きく異なりますから注意が肝要
です。現在の英国は UK（グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国）のこ
とですが、むかしはグレートブリテン島の中のイングランド、スコットランド、ウ
ェールズは全く別の国だった。ですから本書はスコットランドの王室については扱
っていない。本書は歴代の王をめぐる愛妾や庶子などやや下世話な裏話、逸話、エ
ピソードのたぐいがふんだんに盛りこまれているので、楽しい読み物に仕上がって
います。

なお、本書は pope を法皇と表記していますが、法皇とは出家した太上天皇の称号
ですから pope の訳語として使うのには違和感があります。慣例にしたがい、法王
か教皇にしてほしかった。