臨床とことば (朝日文庫) の感想

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タイトル臨床とことば (朝日文庫)
発売日販売日未定
製作者河合 隼雄
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022616623
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 論文・評論・講演集

購入者の感想

「聴く職業」心理学の、我が国における第一人者ともいえる河合隼雄氏(元文化庁長官)と、著書『聴くことの力』で臨調哲学の立場から会話の磁力を再定義した鷲田清一氏(元大阪大学総長)。この二人をして「臨床的なことば」というテーマで対談を行い、面白くない訳がない。対談の本流としては、おそらくは鷲田氏が一歩下がる形で河合氏の土俵である「相互関係におけるケア」を主眼としてそのレールが敷かれるが、鷲田氏も、鷲田節を全開にして二人でしかなしえない素晴らしい対談を作り上げている。今まで私が読んできた対談の中でも最高クラスに面白い。

二人の立場は、とりもなおさず「臨床」であるのだが、臨床というものは体系化が難しく、偶然、特殊といった要素が常につきまとう。ただし、二人が述べるように、個別というものを掘り下げていくとき、そこには科学的なものではないが、普遍的な人間性といったものが浮かんでくる。

本対談の中には、素晴らしい文章が並んでいるが、2点ほど引用。

世界を自分から切り離して観察し研究する近代科学による知に対して、人間はどうしても自分との関連において、あるいは、自分をも入れ込んだものとして世界をいかにみるかということが必要である。~したがって、概念化して考えることよりも、いかにそれとかかわるのか、なにをするのか、ということが大切になってくる。

(自分が自分を規定するための)ある物語を身から引きはがすことは、ほとんど自分を破綻させることと同じになる。~だから、語りなおしには、まず硬直化した物語をぐらつかせるということが必要になる。が、物語をぐらつかせるということはそのまま自己をぐらつかせるということなので、そこに一種の介添えというものが必要になる。

会話、相互関係のケアといったテーマから、二人のみる人間観が見えてくる。文章もほんとうに平易なもので、前知識なくすらすらと読める。ほんとうによい対談です。

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