帰郷 の感想
参照データ
タイトル | 帰郷 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 浅田 次郎 |
販売元 | 集英社 |
JANコード | 9784087716641 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 |
購入者の感想
太平洋戦争を題材や背景に取り込んだ6つの短編からなる。大佛次郎賞受賞。
「戦後70年」を超えたいま、このような小説を著す意味は何だろうか、一方で未だあの戦争を(実体験として)記憶している人々が(少なくなったとは言え)いるなかで、戦後生まれの創作者があの戦争を語ることはどのように可能なのだろうか、逆に戦後生まれだからこそできる創作とは何なのだろうか―それは例えば映画化されたマンガ『この世界の片隅に』にも通じる問いだ―と考えつつ読んでいたら、自衛官と旧陸軍兵士が、深夜、時空を超えて邂逅する「不寝番」のなかに次のようなフレーズがあった。
「戦争は知らない。だが、ゆえなく死んで行った何百万人もの兵隊と自分たちの間には、たしかな血脈があった。ジャングルの中や船艙や、凍土の下に埋もれていった日本人を、外国人のように考えていた自分が、情けなくてならなかった。(p.164)」
ここに、本短編集への著者の思いが凝縮されているように思われる。むろん、それは戦争で亡くなった人だけでなく、さまざまな思いを抱きつつ戦後を生き延びてきた人についてもそうなのだろう。
「戦後70年」を超えたいま、このような小説を著す意味は何だろうか、一方で未だあの戦争を(実体験として)記憶している人々が(少なくなったとは言え)いるなかで、戦後生まれの創作者があの戦争を語ることはどのように可能なのだろうか、逆に戦後生まれだからこそできる創作とは何なのだろうか―それは例えば映画化されたマンガ『この世界の片隅に』にも通じる問いだ―と考えつつ読んでいたら、自衛官と旧陸軍兵士が、深夜、時空を超えて邂逅する「不寝番」のなかに次のようなフレーズがあった。
「戦争は知らない。だが、ゆえなく死んで行った何百万人もの兵隊と自分たちの間には、たしかな血脈があった。ジャングルの中や船艙や、凍土の下に埋もれていった日本人を、外国人のように考えていた自分が、情けなくてならなかった。(p.164)」
ここに、本短編集への著者の思いが凝縮されているように思われる。むろん、それは戦争で亡くなった人だけでなく、さまざまな思いを抱きつつ戦後を生き延びてきた人についてもそうなのだろう。