The Third Way: The Renewal of Social Democracy (English Edition) の感想

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タイトルThe Third Way: The Renewal of Social Democracy (English Edition)
発売日2013-07-22
製作者Anthony Giddens
販売元Polity
JANコード登録されていません
カテゴリ洋書 » Subjects » Nonfiction » Government

The Third Way: The Renewal of Social Democracy (English Edition) とは

   社会学の世界的権威でもあり英国ブレア政権のブレーンであるアンソニー・ギデンズが、古典的社会民主主義と新自由主義を対比させながら、社会民主主義の刷新について論じているのが本書である。

 「第三の道の政治か目指すところを一言で要約すれば、グローバリゼーション、個人生活の変貌、自然と人間との関わり等々、私たちが直面する大きな変化の中で、市民一人ひとりが自ら道を切りひらいていく試みを支援することに他ならない」と基本は至極シンプルで、方向性は「社会民主主義をめぐる論争が本格的な脱国境化を遂げること」。だが、そのプロセスである「第三の道へのプログラム」各論は難解だ。プログラムとは、

  1. ラジカルな中道
  2. 新しい民主主義国家(敵不在の国家)
  3. アクティブな市民社会
  4. 民主的家族
  5. 新しい混合経済
  6. 包含としての平等
  7. ポジィティブ・ウェルフェア
  8. 社会投資国家
  9. コスモポリタン国家
  10. コスモポリタン民主主義

の10項目。

 「民主主義はあまねく普及し、民主主義国家同士が交戦することはないとの仮説が信憑性を帯びてきた」(232ページ)との言葉に代表されるように、ギデンズ先生は全体に楽観的で民主主義過信ぶりが目につく。たとえば “民主的家族” 。家族政策の重要性を前置きしたうえで「民主化された家族もまた一つの理想像である」と難解なことを言ってのけ「親の権威の何たるかは、親子の話し合いによって定まるのであって、最初から決まった定型があるわけではない」と脳天を一撃してくれる。もっともこの前提には『親密性の変容』(原題『The Transformation of Intimacy』)という興味深い著作があるので、興味ある向きにはこちらもおすすめ。

   世界各国で翻訳された本書には多くの批評が寄せられ、著者はすでに本書に対する批判に答えた『The Third Way and its Critics』を上梓している。併読すれば、より理解が深まるだろう。少なくとも民主党をはじめめとする政党の政策理解に役立つはず。政治、経済、社会学を学ぶ上でおさえておきたいテキストだけに、ノンブルが本のとじめの部分にあるのがいただけない。(松浦恭子)

購入者の感想

世界的に広く読まれた本であり、日本の言論や政治にもそれなりの影響を及ぼしていると思われる本書であるが、想定より面白く、非常に優等生的な内容で、今読んでも参考になる部分が少なくないと思える一方、世界的に影響を及ぼした程度のわりにはかなり「シンプル」な本だとも思った。このシンプルだという印象は基本的にはどちらかというと悪い方の意味である。(無論、本書は平易という意味でもシンプルであり、社会学者の真剣な政治論と言ってもたじろぐ必要は全くなく、通読の敷居はかなり低い。恐らく子供でも読めてしまうだろう。難しさで言ったら、ギデンズの本業の社会学研究の本の方が遥かに高度だ。)何だか基本的には優等生的な良い事、バランス感覚に溢れた提言を述べているようなのだが、しかしよく見るとどれも浅く簡素な提言で、こんな程度で、現実政治の指針になるものなのだろうか、と思ってしまうのだ。とは言え、これはギデンズ自身が自覚・自認しており、堂々と読者に対して注意を促している事である。56頁から57頁には「読者の皆様方には寛大であってほしい。(中略)いずれも劣らぬ大問題だからである。その上、紙幅の都合上、要約的な解答を示すのが精一杯だし、私見のそこかしこに疑問を抱く読者がいるにせよ、納得いただけるに足るだけの根拠を本書の中で示すことはできそうにもないからである。」とある。見ての通り、何の躊躇いもない、ある意味では誠実な具合で、とても弱気である。本書の最大の欠点はこのように本人が認めているように、本書の提言があくまで大雑把な理念の提言のようなものであり、それほど詳細な提言も、詳細な根拠付けも見られない点であろう。先の引用の言葉を文字通り真に受けると本書においてギデンズは批判的な読者に十分反論できるとは全く考えていないようであるし、疑問を抱く読者を納得させる事も最初からかなり諦めてしまっているようだ。その上で言えば、確かに本書は傾聴に値する興味深い新しい政治理念の提案、現実的な政治的提言を行っていると思われる。また日本の言論や思想との関係で言えば、日本のリベラルな言論を引っ張ってきた代表者の一人である宮台真司がかなり重度にギデンズの影響を受けており、宮台氏の提言のかなりの部分がギデンズを元ネタとしているようである点も(少なくとも個人的には)見逃せない。理解を深める目的であれ、背景から批判する目的であれ、宮台氏

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