Melville: His World and Work の感想

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参照データ

タイトルMelville: His World and Work
発売日2006-09-12
製作者Andrew Delbanco
販売元Vintage
JANコード9780375702976
カテゴリ » 洋書 » Subjects » Biographies & Memoirs

購入者の感想

まずジャケットの美しさが目を惹く。パステルの色調がどことなく「新しいメルヴィル」を感じさせるから。ちなみにペーパーバック版はもうひとつPicadorから出ているものもあるようだが、とにかくこのVintage版が私は好きである。

著者のAndrew Delbancoはコロンビア大学で教える19世紀アメリカ文学の研究者である。私がこの人の名前に出会った最初は1994年頃である。当時、Penguin Booksの『白鯨』が改版されたばかりで、Delbancoがその序論(Introduction)を担当しているのを見て軽い衝撃を受けたのだった。なぜショッキングだったかというと、ペンギン版の『白鯨』といえば、それ以前に出ていたHarold Beaverの手による300頁に及ぶ膨大な詳註が付されたものが質量ともに圧倒的な魅力を備えていたからである。この改版によって、Beaver版は古書でしか手に入らなくなってしまった。新しいペンギン版は註釈も必要最低限の量となり、私はこのスリム化にずいぶんと拍子抜けしたのだった。まあ、商業的な意味合いもあったのだと思うけれど。

あれから10年以上たち、2007年だったと思うが、私は京都の洋書屋で本書を見つけた。作家の研究書などはあまり買わないが、メルヴィルであるのと、著者がAndrew Delbancoという見知ったメルヴィリアンであるのと、ジャケットの清新さとに促されてその場で購入したのだった。

ポップな感じがいい。日本で言うと、佐藤良明がピンチョンを論じているような感じだろうか。そしてメルヴィルへの愛しみに溢れている。冒頭を読むだけでも、著者の意気込みが感じられる。なぜなら、構成が『白鯨』と同じなのだから。

メルヴィルが『白鯨』冒頭部の「Extracts」において、それまでの文献に現れた「鯨」にまつわるあらゆる記述を大胆にもそこに記録しようとしたように、Delbancoも本書の冒頭に「Extracts」というパートを設け、そこに20世紀の文化的諸相に現れたメルヴィルとその作品についての種々雑多な言及を「司書助手見習い」さながらにコピー&ペーストする。正直、この遊び心には一驚した。

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