群像 2019年 11 月号 [雑誌] の感想

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参照データ

タイトル群像 2019年 11 月号 [雑誌]
発売日2019-10-07
販売元講談社
JANコード4910032011195
カテゴリ »  » ジャンル別 » 雑誌

購入者の感想

大江健三郎のアクチュアリティⅡが面白い。高原到「テロリストが、生まれるー『セブンティーン』『政治少年死す』」が秀逸である。著者は、大江作品と沢木耕太郎の『テロルの決算』を比べながら、大江作品の優秀さを作品構成から詳論する。この分析が素晴らしい。沢木の作品は大物左翼政治家の列伝を描きつつ!最後にこの人物が右翼少年に刺殺されるまでを描く。大江の『政治少年死す』は、右翼少年が大物左翼左翼政治家を刺殺するまでの逡巡を巧みに描く。
面白いのは、大江が60年安保闘争終結直後に、なぜ右翼少年のテロ事件を作品にしたのかということである。この作品には組織的な学園紛争の敗北に対する大江の怒りを読み取ることは出来ないか?右翼少年の登場はこの怒りの表出である。組織ではなく、一人の少年を登場させたことの意味はそこにある。もちろん、実在した右翼少年の大物左翼政治家殺害と自死が題材を提供したことは間違いない。右翼少年の死は右翼の個人的テロの敗北を意味する。だとすれば、左翼の組織的活動に再び期待するメッセージがこの作品から読み取れないだろうか?つまり、『政治少年死す』は、70年安保闘争への期待を込めて、大江がメッセージを託した作品ではないのだろうか?組織的闘争を諦めてはならないのである。右翼のテロリストには未来はない。
『セブンティーン』から『政治少年死す』までの作品構成の変化の意味はそこにあったのではないか?
読みは様々あって良い。この論文だけでも本誌は読む価値がある。
お勧めの一冊だ。

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