山椒大夫 4K デジタル修復版 Blu-ray の感想

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参照データ

タイトル山椒大夫 4K デジタル修復版 Blu-ray
発売日2017-11-02
監督溝口健二
出演田中絹代
販売元KADOKAWA / 角川書店
JANコード4988111152565
カテゴリ » DVD » ジャンル別 » 日本映画

購入者の感想

私は日本映画、特に初期黒澤作品や座頭市のような娯楽作以外の古い邦画はあまり見てきていない。
溝口監督作品も雨月物語以外は鑑賞経験がなかったが、今回4K修復版発売を期に購入してみました。

特にこの山椒大夫はなんとなく説教臭い気がして(笑)敬遠する気持ちが強かったが、意外にと言うか流石と言うか楽しめました。
森鴎外の原作とはかなり変えてきているのですが、特にラスボス山椒大夫の扱いが全く違う。
原作では極悪というより旧来のシステムに従っているだけの印象が強く、最終的には厨子王の奴婢解放も受け入れて子孫代々繁栄したことになっています。これはたった一人の改革が協力者もないまま強固な体制(搾取される奴婢ですら世の中はこういうものだと思っている)を覆せるはずがないという考えから、あえて勧善懲悪という説話のテーゼから外れるのを承知で貫いた鴎外なりのリアリズム。言わば奴婢解放を成功させるために逆算的に導かれたストーリーだったと思うのですが、映画は逆に「永続的な奴婢解放」の蹉跌を暗示させることで鴎外とは逆のリアリズムを貫いています。

時代背景だけを考えれば出てくるのはおかしい「上司の命令に逆らうのか」と言うセリフも、そう考えれば映画的リアリズムの表現でしょう。

映像はさすがに美麗で、死を覚悟した香川京子の静かな微笑みとそれに続く名高い安寿入水シーンは息をのむ美しさ。
4Kの実力にふさわしい高解像度なのかについては、なにしろ古いフィルムなので上げすぎるとかえって作品の質を損なう、というギリギリの線を保っていると思います。
先行するクライテリオンの米国版との比較については、日本語字幕が付いている分こちらに軍配を上げましょう。

最後に、貴重な映像資産の修復を主導してくださったマーティン・スコセッシ氏に感謝を。
未だ修復されていない邦画の名品を、できることなら今度は国内の力だけで再生して欲しいという願いをこめて・・・。

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