鼻の先から尻尾までー神経内科医の生物学 の感想
参照データ
タイトル | 鼻の先から尻尾までー神経内科医の生物学 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 岩田誠 |
販売元 | 中山書店 |
JANコード | 9784521737065 |
カテゴリ | ジャンル別 » 医学・薬学・看護学・歯科学 » 臨床内科 » 脳神経科学・神経内科学 |
購入者の感想
岩田誠先生は医業の傍ら多くの文章を発表されている。それは専門性の高い医学論文から一般向けのエッセイにわたる。神経学会で本書のポップな表紙(和田誠氏、それとも五味太郎氏?と思った)を見て私が咄嗟に思ったのは「こんな一般用の本をどうして医学書専門の出版社から出すのだろう。ふつうの出版社で新書にしたらたくさん売れるし単価も安くなるのに」ということであった。
しかし読み始めてすぐ、やはりこれはある程度の専門知識を要する本だ、と悟る。要は比較解剖学についての随想なのである。鼻先から始めて尻尾を支配する神経・筋の名残まで、上から順に一番下まで、きれいに並べた短文集。
岩田先生の師匠の一人である故・萬年甫先生は比較解剖学の大家であったし、さらに遡って小川鼎三先生も同様であったはずである。東大にはそのような歴史の流れがある(あった)。翻って今の神経学はmolecular biology全盛であり、病態解明や新規治療の開発のためにそれは必須の流れなのだろうと思う。しかし私などは、古くから受け継がれた神経症候学や五官を駆使した診断学がともすれば等閑にされている事実に大きな幻滅を感じている。高度な研究を発表し続ける「偉い」医師がしばしばお粗末な臨床診断能力しか持たない現実。しかし岩田先生は該博な教養と旺盛な好奇心とで日常の小さな発見から誰も気付かなかった仮説を導き出し、それをもっとも洗練された方法で私たちに提示する。本書に詰まっているのはそのほんの一端であると言ってよい。しかも臨床に直結するのだ!
いくつか疑問に感じた記述もあり、とくにp.69-70の「魚には舌はない」という記載についてご本人に直接お伺いした。「(確かに舌のようなものはあるけれども)あれはヒダのようなものではないでしょうか」というお返事であった。せっかくのご歓談中に、まことに無粋な質問で、大変失礼致しました。また自分でも調べてみます。
しかし読み始めてすぐ、やはりこれはある程度の専門知識を要する本だ、と悟る。要は比較解剖学についての随想なのである。鼻先から始めて尻尾を支配する神経・筋の名残まで、上から順に一番下まで、きれいに並べた短文集。
岩田先生の師匠の一人である故・萬年甫先生は比較解剖学の大家であったし、さらに遡って小川鼎三先生も同様であったはずである。東大にはそのような歴史の流れがある(あった)。翻って今の神経学はmolecular biology全盛であり、病態解明や新規治療の開発のためにそれは必須の流れなのだろうと思う。しかし私などは、古くから受け継がれた神経症候学や五官を駆使した診断学がともすれば等閑にされている事実に大きな幻滅を感じている。高度な研究を発表し続ける「偉い」医師がしばしばお粗末な臨床診断能力しか持たない現実。しかし岩田先生は該博な教養と旺盛な好奇心とで日常の小さな発見から誰も気付かなかった仮説を導き出し、それをもっとも洗練された方法で私たちに提示する。本書に詰まっているのはそのほんの一端であると言ってよい。しかも臨床に直結するのだ!
いくつか疑問に感じた記述もあり、とくにp.69-70の「魚には舌はない」という記載についてご本人に直接お伺いした。「(確かに舌のようなものはあるけれども)あれはヒダのようなものではないでしょうか」というお返事であった。せっかくのご歓談中に、まことに無粋な質問で、大変失礼致しました。また自分でも調べてみます。