ラテン語を読む キケロ―「スキーピオーの夢」 の感想

こういう本がベストセラーになる時が来てほしい。そう思える程、本当にラテン語を勉強したいと思っている全ての人にとって宝物のような本である。これまで敢えて誰も試みたことのない、徹底して読者目線に立ったテキスト。この本を通じて多くの優秀な専門家が育つだけでなく、多くの心ある人々に、2000年前という遠い昔の賢人・偉人たちの普遍的価値ある言葉、色あせぬ深い洞察、生き方の有り様を、原典を通して肌身で、しかも楽に正確に味読できる道具・機会が簡単に入手できることになったのである。たおとえ文法は解らなくても解説を見れば基礎知識無い人でも原典の香りを感じられるよう懇切きわまりない導きの手、説明があり、ひもといた人には全員に理解してもらいたいという著者の厚い思いを感じる。これと総ての単語に重複を厭わず解説がほどこしてある。これは大変なことである。読み進める中で後ろを振り返る必要が無い、こういう経験も外国語を学習したことのある者、特に前へ前へと読んで行く人にはよく解ると思うが、学習効果を増幅させるありがたい工夫なのだ。類書とは異なる際立つ特徴がここにある。
一旦はラテン語の勉強を始めながら途中で挫折し、その後心ならず再び触れることなく、おそらく自らは永遠に扉を再び開くことはなかったであろう多くの人達の忘れた情熱との再会への導き、そして学びへの再開の思いがけない励ましともなるであろう一冊、時代を超えた英智を追い求める全ての人の人生へ素晴らしい贈り物!！専門家を目指す人に限らず志高いすべての人に読んで学んで、書き込みで一杯にしてもらいたい本である。この中の一文「汝の魂を最善のことに発揮せよ」を知るだけでも価値がある。採算度外視で企画・発売に踏み切った出版社の英断と著者の情熱・高い志にエールを!。

2018年4月9日追加
最近の他の方の書評に触発されてコメントします。理想:究極の学習テキスト とは？→現在別ページに書いてある先生の語の変化形および語釈