昭和三十年代 演習 の感想

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参照データ

タイトル昭和三十年代 演習
発売日販売日未定
製作者関川 夏央
販売元岩波書店
JANコード9784000258982
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

練達の手練れによる昭和三十年代をめぐる歴史的考察。当時の時代の世相や様々な地下水脈が、小説や映画など分かりやすい素材をネタにしながら、広くそして深く読者の現前に明らかとなる。正に昭和三十年代に生を受けた一人として、大変面白く拝読しました。一気読みでした。

「つまり実像よりも、その後の評価によって歴史は歴史となるのです。・・・ しかし、その部分は意図して忘れられます。忘れようと人はつとめるのです。・・・「文学」は(この場合、マンガも映画も)・・・ かくあったはずだ、または、かくありたかった、という状態の演劇的再現でよいのです。・・・ 歴史の間違いが「好意」によって許され、それが「善意」の人びとに真実と認識されて継承されることへの複雑な感慨です」(17〜8頁)。
「「社会小説」ジャンルを開拓したと自負する三島由紀夫には、高級官僚の堕落と保身を指摘するだけで「社会派」と呼ばれる松本清張の作品は笑止と映ったはずです」(76頁)。
「その死の淵へと雪崩落ちる分水嶺は、中央公論社「日本の文学」の編集委員となって松本清張作品に拒絶反応をしめし、また小説『剣』を書きあげたこの昭和三十八年夏にあったのではないか、と私は考えています」(85頁)。
「先進国に似つかわしくもなく「民族主義」の立場を現在も守りたいのなら、韓国は同民族として北朝鮮の犯罪と恥を、すべて引受けなければなりませんが、その覚悟はないようです」(143頁)。
「昭和三十年代は、端的にいえばですが、不便さと「教養」が存在した時代でした。・・・ 貧しいにもかかわらず、人は意地を張るように本を買いました」(193頁)。

特に興味深かった箇所は、一例ですが、松本清張と三島由紀夫の比較分析(第二講、第三講)や『砂の器』の記述の皮相さの指摘(55頁)、強運の船「宗谷」をめぐる昭和史(第四講)などですね。

明治期以降の文学や文学者をめぐる探索で鍛えた氏の時代認識の方法論を、「昭和」という対象にあてはめた優れた時代評の一書です。

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