パラノーマン ブライス・ホローの謎 [DVD] の感想

かつて、寝台特急『北斗星』のミニロビーカー(JR北海道供出車両)では、アニメ映画作品のビデオ放映がされていましたが、『パラノーマン ブライス・ホローの謎』もその一つでした。
ほとんどの乗客が寝静まった真夜中に、車内の様子を余すところなくビデオカメラで撮影しようと車両間を移動していると、誰もいないロビーカーで本作品の映像と音声が流れていることに気づき、小休止のつもりでソファーに腰掛けて視聴しているうちに、人間の悲しい弱さや恐怖、非情さ、残酷さ、それらが群衆心理と化して個々の人間の理非を喪失、あるいは麻痺させてしまう仕組みと扇動されるあらゆる暴力、しかし、一人一人の人間の素朴な優しさとか思いやり、立ち止まる理性と突き進む思慮、葛藤と抗う真心と勇気・・・次々と脳裏に浮かぶこれらのキーワードに導かれるようにストーリー展開に引き込まれ、車内の撮影のことなど忘れて、ロビーカーから離れられなくなったあの日、あの時が思い出されます。
国の内外問わず、現代の病理的な事象のあれこれを踏まえて思い返すと、本作品のストーリーは、差別やいじめ、繰り返される紛争と犠牲、深い悲しみと失望、やり場のない怒り、怨嗟、後悔と反省、決心と克服といったキーワードに置き換えられ、本作品のスタッフが視聴者、特に次世代を担う子供たちに伝えたかったテーマとして突き付けられているとの想いを禁じ得ません。
数々の忘れ得ぬ『北斗星』の想い出の一つということもあり、『北斗星』廃止後もこの作品が脳裏から離れず、主人公の少年ノーマンの名前を頼りに手元へと届いた次第です。
現代に生まれ、望まれる未来を創り行かん子供たちにはもちろん、現代に生きて、望まれる未来を描かん大人たちにも、ぜひとも、小休止で立ち寄るように視聴してみて欲しいと願わずにはいられません。望まれる大切な“何か”が思い出されるはずです。