シリーズ<本と日本史> 3 中世の声と文字 親鸞の手紙と『平家物語』 (集英社新書) の感想

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参照データ

タイトルシリーズ<本と日本史> 3 中世の声と文字 親鸞の手紙と『平家物語』 (集英社新書)
発売日2017-01-17
製作者大隅 和雄
販売元集英社
JANコード9784087208641
カテゴリ人文・思想 » 宗教 » 仏教 » 仏教入門

購入者の感想

 本書では中世の手紙や書物が色々と取り上げられているが、最も紙数が割かれているのは『平家物語』で、第三章の後半にその成立過程について述べられた後、第四章は代表的な文章(原文)とともに丸々平家物語の概要説明に充てられている。第四章では他の章と異なり、あえて原文に対する現代語訳を省いてあるが、それでも大体の内容は理解できる。それは、元々この物語が琵琶法師の語る口語として成立したものだからであろう。漢字漢文の読み書きができる貴族や僧侶以外の大多数の人々が無文字社会に生きていた中世の社会において、琵琶の調べに乗せて「声」として語られる同一の物語が日本中に広まったことのインパクトの大きさを改めて認識させられた。

 「声」を伝えるかな文字による文章の重要性は、第一章で取り上げられている親鸞の手紙も同様で、東国の弟子に宛てて書かれたかな交じりの手紙は、そのまま文字の読めない一般の信者に口頭で伝えられ、教義に対する疑問解消などに役立てられたとのこと。教祖の手紙が地方の寺で現代まで大切に伝えられているという事実が布教における重要性を物語っている。

 一般に中世というのは日本歴史の中でもあまり人気がある時代とは言えないし、かなが普及してきた時代とは言え現代とはかなり言葉も違っていて原文を読むのは困難が伴うので、本書は「本と日本史」シリーズの中でも敬遠されそうにも思われる。ただ実際に読んでみると、取り上げられている原文には現代語訳がつき、更に内容について解説も付けられているのでわかりやすい。本を写す裏紙として使われたことが幸いして今日まで残された貴族の母親の子供を思う気持ちが込められた手紙など興味深い題材も取り上げられており、少しでも興味を持たれた方には一読をお勧めしたい。

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シリーズ<本と日本史> 3 中世の声と文字 親鸞の手紙と『平家物語』 (集英社新書)

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集英社から発売された大隅 和雄のシリーズ&lt;本と日本史&gt; 3 中世の声と文字 親鸞の手紙と『平家物語』 (集英社新書)(JAN:9784087208641)の感想と評価
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