細雪 [東宝DVDシネマファンクラブ] の感想

花の命を揺らめかせ移ろいゆく季節は、希望の蕾をふくらませ、夢花を咲かせ散らし、やがて忘却の枯淡につつみこむ。
むごくもあり、やさしくもあり、ただ止まることのない時の流れがあるばかり。
四季の空模様にさまざまに咲く花影の儚さと鮮やかさを、縦糸に横糸に織りあげた美麗な映像の花暦…。
そんな映画ですね。

「丸帯や。どれもこれも鳴るんで、解いたり締めたり、汗かいたわ」
「あほらし。うちの方がしんどかったわ…」
「帯が新しかったんや。古いのは地がくたびれてるよってに、音がせえへんねん」

若い帯は張りきって華やかで美しくはあるが、摩擦をおこして喧しくもある。
老いてくたびれた帯の方が、慎ましく優しく人の身を包み止めてくれる。
人もそれと同様ならば、時代とともに枯れゆくことも、また愛し美し…。
秀作です。