サルなりに思い出す事など ―― 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々 の感想

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参照データ

タイトルサルなりに思い出す事など ―― 神経科学者がヒヒと暮らした奇天烈な日々
発売日販売日未定
製作者ロバート・M・サポルスキー
販売元みすず書房
JANコード9784622078326
カテゴリ » ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 科学読み物

購入者の感想

 1970年代後半から20年以上にわたり、アフリカでサルの群れを観察してきた著者のサポルスキー。21歳の若さで単身アフリカに乗り込んだのは、(チンパンジーでもゴリラでもなく)ヒヒを研究するためであった。とはいっても、本書の内容はヒヒの行動観察記に尽きるものではない。むしろ、その観察期間をとおして、著者がアフリカの自然や人々と接しながら身をもって体験したこと、そのことが本書のストーリーの中心となっている。
 4部からなる、時代順の目次構成がじつに見事だ。そして、そのなかでもとくに印象的なのが、各部の終わりに配された長めのエッセイだろう。内戦中のウガンダやスーダンを訪問し、命からがら脱出した話(第I部、第II部)や、マウンテンゴリラの先駆的研究者でありながら、強硬な保護活動家でもあったダイアン・フォッシーの墓を訪れた話(第III部)。そして、本書の最後で明かされる、著者の愛するヒヒの群れに訪れた大きな事件の話(第IV部)。いずれも、その教訓とともに、心に強く残る話であるから、その内容はぜひみなさん自身でたどってほしい。
 ほかにも本書では、読者の心をくすぐる驚きのエピソードが満載だ。たとえば、キャンプを襲うゾウたちに囲まれながら脱糞した話や、目の前で少年がマサイの戦士によって誘拐された話、というように。もちろん、そんなエピソードを最後まで興味深く読めるのは、読者をグイグイ引き込んでいく、この著者の軽妙な筆があってこそだろう。
 文字どおり、笑い、ギョッとし、怒りに震え、目頭が熱くなる、そんな体験をさせてくれる本である。何とも言えないこの読後感は久しぶり。サル好きのみならず、多くの人が堪能できる1冊であると思う。

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