ドリーム 2枚組ブルーレイ＆DVD [Blu-ray] の感想

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20年ほど前に訪れたアメリカ南部、｢colored｣と彫られた水飲み場はありました、ダウンタウンのちょっと外れに。
南部を訪れる訳ですから事前の知識を持っていたものの、実際に目で見た実物にはショックを受けましたし、我々黄色人種も白人からすれば｢colored｣でありますから、内心ビクビクしながら街を歩きました。特にバーミンガムでは。

そんな体験がありましたから、この映画での人種差別の描き方を見て悲しくなり、胸が苦しくなるような感覚を覚えました。
だからこそ、すごく平凡な言葉ではありますが彼女たちの努力と勇気、その結果の素晴らしさに心から感動しました。
率直に憤りを覚えたり、また素直に感動できる映画は最近少ないですよね。こういう映画にまた出会いたいです。
パーソンオブインタレストでのタラジは素晴らしかったけど、本作も本当に素敵だった！
女性陣の髪型とファッションも質素ながらおしゃれで一見の価値アリです。

アポロ計画の前段階だったマーキュリー計画を支えた3人の黒人女性たちの人間像。基本的に史実ベースで、ある意味みるもののおもう方向に進行していく作品ですが、彼女たちが受けた偏見や人種差別の重さ、そしてそれに打ち克ってゆく姿が心に響かずにはおれません。黒人初の大リーガーだったジャッキー・ロビンソンを描いた秀作「42 〜世界を変えた男〜」を思い起こしました。「42」でも人種差別場面は凄まじかったですが、本作ではさらに女性への差別が加わり、3人の人生はある意味壮絶な戦いの連続だったと、しかと伝わってきました。

女優3人が好演。特に！「ヘルプ～心がつなぐストーリイ」でも抑圧される黒人メイドを演じて見事にオスカー助演賞を射止めた、オクタビア・スペンサーの演技には、ひきつけられ目を離せませんでした。彼女の豊かな表情演技、存在感が、本作を輝かせるポイントとなったとおもいますし、映画ファン必見といってよい演技とおもいます。

人種差別と、自身の限界と、そして彼女たちぬきでは結局勝利がありえなかった旧ソ連とのサイエンスの戦い。原題Hidden Figuresとは彼女たちの「知られざる人物群像」の意味でしょうか。それともFiguresのもうひとつの意味「計算式」のほうで、計算役の主人公の活躍をも表現したものでしょうか。いずれにしても邦題「ドリーム」などというような安直な内容でも、次元でもない、真摯な、そして良質な人間ドラマ作品とおもいます。広く映画ファンにお勧めしたい作品です。佳い映画とおもうのですが、正直な感想で、「42」「ヘルプ」と比較して作品完成度的には優っているとはいいづらく、全体で星4.3かな。ついでで恐縮ですが「42」「ヘルプ」も各々、黒人差別問題を背景とした素晴らしい人間ドラマ作品で、本作に共鳴されたみなさまにはお勧めしたいと存じます。