DINOSAUR (初回限定盤)(Blu-ray付) の感想

これまで全てのアルバムを聴いてきて、ELEVEN以降、全てのツアーにも参加してきたファンです。
今回、約3年ぶりの作品ということで、どれだけの変化があるかを期待しておりましたが、事前に出てきたシングルや表題曲にも、過去の作品の焼き直しで、むしろ、退化してしまった感すら感じました。

メロディもコード進行も、アレンジも、過去に聞いた事のあるものの再編成、
歌詞はマッチョなパワーものか、何千回も聞いてきた、かつ、稲葉さんのリアリティや、新たな気づきを与えてくれる世界観のない、メッセージを感じない言葉の羅列…

どうしたんだろ、B’zって、こんなもんじゃないはずなのにな…という、前々作の「C’mon」あたりから少しずつ感じ始めていた違和感が、見事に露呈した、というのが、率直な感想です。

スルメアルバムなのかもしれない、と思い、時間を空けて何度か聴きましたが、一度聴くと、展開が想像できるし、歌詞にもフックがなく言葉の選び方も魅力を感じず、スキップ、スキップの連続で、あっという間に一曲目まで戻ってきてしまいます。
なにより、稲葉さんのヴォーカルが、ほとんどの曲でAメロから最後のサビまで高域のミックスボイスで歌われており、地声に近い低音でずっしりと響いてくる艶感や、説得力のある深みといった、INABA/SALASでもさらに磨きのかかった彼の声のふくよかさが、ほとんど活かされていない点が残念でした。

「日本が誇る、現代に生きる、最高のハードロックジャムバンド、としてのアルバム」であれば、最高のグルーブとテクニックによる演奏が集約されている最高評価なんだと思います。

しかし、彼ら本来の持ち味は、何よりも、曲と詞の素晴らしさだと考える私からすると、そもそも、私のようなファンと、作り手側の意図が大きく乖離しているという事なのでしょう。

Friendsシリーズで表現したAORや、7th

70年代ハードロックの名作を聴いていると、これ、今のレコーディング技術と音で録ったら、もの凄い迫力になるんじゃないかな？

なんて思う時があります。
今回のB’zのアルバムは、そういうアルバムです。

確かに、もの凄い迫力。
いわゆるJ-POP的キャッチーさとは世界が違うので、それをB’zに求める人には物足りないかもしれませんが、恐らくそれは本人たち織り込み済みでしょう。歌メロも、キャッチーさとクセという相反する要素が入り混じっています。

だから、全体のバランサー目的で、J-POP的キャッチーさを兼ね備えた「CHAMP」「Still Alive」「Purple Pink Orange」を収録しているんだろうと思います。

STEP1：J-POP的キャッチーさによるつかみ
STEP2：延々とリピートできる聴き心地
STEP3：70年代の曲調の曲にハマっていく

この流れがきれいにできていると思います。スパッと気に入られるタイプのアルバムではなく、じわじわ評価型のアルバムだと思います。

アルバムって本来そういうもんだと思いませんか？
シングルより高いお金払うんだから、シングルの寄せ集めじゃ意味がなくて、その分長く楽しめなきゃ損ではないでしょうか？

B’zさんはアルバムのなんたるかをやっぱりよくわかっておられるんだな、と思わせてくれる1枚。