仁義 [Blu-ray] の感想

まるでモノトーンかと思わせる抑えに抑えた色調の中で展開される“宿命”と“義“の世界。

くどくどとは申しません。
“クール”と言う形容は、ジャン＝ピエール・メルヴィル作品こそ最も相応しいと個人的には思っています。

この渋み、スタイリッシュ感。
光と闇のコントラストが強烈なライティングにストイックでスリリングなノワール的カッティング。
目眩むようなショットの応酬と高度な映画技法が魅力的な名手アンリ・ドカエのキャメラ。

ちょっとジャック・ペランみたいな風貌のアラン・ドロンの口髭。
沈着さの中に翳りを帯びたイヴ・モンタンの眼差し。
些細な小道具ひとつにも拘るディティール描写に全編ひりひりする感覚、そしていかにもなメルヴィル的登場人物たちの生きザマ。

性急で唐突な結末を含めて、正にフレンチ・ノワール。
これぞ、男たちの寓話。

「サムライ」「影の軍隊」そして今作と、若い頃名画座の漆黒の暗闇の中で追い続けたピカレスクで濃厚な媚薬がＢＤで甦る。
映画を観る環境、所有する環境は益々良くなってきている事を素直に喜びたい。