水鏡推理4 アノマリー (講談社文庫) の感想

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参照データ

タイトル水鏡推理4 アノマリー (講談社文庫)
発売日2016-10-14
製作者松岡 圭祐
販売元講談社
JANコード9784062935159
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

購入者の感想

 ‟凜田莉子からバトンを渡された”と感じた水鏡瑞希。その意気込みを試すかのような難解な事件。松岡ワールドの中の、莉子とはまた一味違う、もう一人のヒロインの人生が、確かに躍動しています。タイトルの‟アノマリー”(説明不能な事象)は気象予報において不正を働いた側が着眼したポイントでしたが、真実を映し出し、不正を暴く彼女の存在こそが、彼らにとってまさに‟アノマリー‟だったのではないでしょうか。
 この水鏡推理第4弾のテーマの一つである‟天気”。天気に関しては、松岡さんの過去作品である「千里眼」の新シリーズで取り上げられています(ご存知の方も多いでしょう)。昔のテーマも今に息づき、さらに新たな作品へと昇華させているところはさすがです。
 今回のストーリーにおいて、女子少年院の少女4名の登山による更生プログラムと、気象庁vs民間予報会社(依存してもいるが)の構図の組み合わせには、新しいものを感じました。それを可能にしたのは‟判例”の問題だと思います。これが両者の媒介になっています。ここに気づく作者は、やはり社会問題に慧眼を持っているようですね。
 冒頭のシーンが一見妙にカッチリ説明的に描かれていると思いましたが、それは作者の技、ミスリード。読んでいくうちに、散りばめられたキーワードと膨大な栄養ある情報に気を取られ、気づくころにはラストのどんでん返しの大舞台。松岡さんはマジシャンのようでもあります。(「マジシャン」という作品もあります。)
 水鏡推理は瑞希を支える人々(両親以外)が毎回変わります。それは作者が自らに課した‟しばり”だとおもわれますが、それが逆に、あたかも映像の中で、瑞希を残して背景だけが流れ去るような効果を生み、戦いの中で力強く生きる彼女の姿を浮かび上がらせます。
 とはいえ作者が一番描きたいのは、瑞希の心の揺れと成長でしょう。今作では、ゆがんだ親の心とその継承の対極に、、瑞希とその父、勇司の修復された関係を置くことで、明暗を強調して見せています。
 ゆがんだ心があるなら、まっすぐなこころがあるはずです。多様性に寛容な社会において、声高に正しさや真実を言うのが難しいこともありますが、正しさはあると思うし信じたい、瑞希はそれを物語の中の行動で示してくれています。

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