人と芸術とアンドロイド― 私はなぜロボットを作るのか の感想

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参照データ

タイトル人と芸術とアンドロイド― 私はなぜロボットを作るのか
発売日販売日未定
製作者石黒浩
販売元日本評論社
JANコード9784535586246
カテゴリ » ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 科学読み物

購入者の感想

 本書は前著である『どうすれば「人」を創れるか アンドロイドになった私』(新潮社、2011年4月)と内容がかなりかぶっている。本書の方がより概括的であるとともに、前著で中心だった「アンドロイド」の製作よりは、その存在に対する考察がより充実している。後半で示されるその考察の方向はタイトル通り、意外にも芸術に向かっている。
 一見、逆方向の存在のように感じる「芸術」と「技術」であるが、本書にもあるようにルネサンス時代には両者は区別がなかった。著者はここに、「技術開発だけでは範囲が狭くて、伝えたいことが伝えられないもどかしさ」の解決方針を見出した。本書では「芸術の中で明確な評価の基準を持ち、誰でも再現できるものを技術という」という認識の基で、複数のモデルのアンドロイドの開発経験から、人間社会でのアンドロイドの役割や効果を考察している。その考察が、時に著者本人に帰って行き、悩んだり気分を害したりするところはなかなか皮肉であるが、著者の真面目で正直なところがよく現れていると思った。
 終章で芸術の存在に対する危機感から、技術を学んだ果てに挑戦者として芸術に帰って行きたいというメッセージは、ジェミノイドではない著者本人の大きな魅力として映った。
 どちらか一冊を読むのであれば、前著よりは本書の方が良いと思います。今後も研究の成果に応じて本書のような一般書を出してほしいです。

アンドロイド制作、特に自分そっくりのジェミノイドで世界的に有名な工学者石黒浩氏が、アンドロイドとは何かにしぼってまとめた最新作です。瞠目の発見、気づきの連続で、初めて著者の本を読む人なら、ドラマ以上の面白さにページをめくる手が止まらないのではないでしょうか。
 
 オーストリアのリンツのカフェにジェミノイドを置いて人々の反応を見た経験、同地でのアルスエレクトロニカセンターでの、メディアアート大会のもようなどから始まり、2章「ジェミノイドを作ってわかったこと」では、これまでの本に何度か出てきた内容ですが、ジェミノイドに自分の身体が移行する感覚、ジェミノイドを作ってみて自分に起こった内的変化などがきわめて率直に語られています。3章「人間らしさを作り出す」では、具体的なアンドロイド制作の方法が説明され、4章「人間以上のロボット、最低限の人間」ではロボット演劇の実験なども含め、人間が人間そっくりの存在に注ぐまなざしが冷静に観察されます。芸術になってゆく技術について、著者のいま現在のモチベーションも垣間見えます。
5章では「社会を変えるロボット・メディア」として、遠隔対話装置としてのロボットが人間同士をつなぐ新しい絆になる可能性が述べられます。いかにもロボット然としたロボットであっても、それを配置しておくことで、遠くからその部屋のようすを見ることができ、都合のよさそうなときに部屋の人間に話しかけることができる、あるいはメールを送ると、ロボットがしゃべってくれる、など、いわば携帯電話のもつコミュニケーションの敷居の低さを、人間的なぬくもりを加えたうえで拡大するものとして期待が持てます。

 ここまでは従来の著者の本でもある程度述べられていましたので、総復習でもあり、同時に「ロボットが人間を照らし出す」という文脈に置き直すことによって、哲学、認知科学、心理学などさまざまな分野に広がる豊かさを確認させてくれます。

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日本評論社から発売された石黒浩の人と芸術とアンドロイド― 私はなぜロボットを作るのか(JAN:9784535586246)の感想と評価
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