幕末あどれさん (幻冬舎時代小説文庫) の感想

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参照データ

タイトル幕末あどれさん (幻冬舎時代小説文庫)
発売日2012-09-28
製作者松井今朝子
販売元幻冬舎
JANコード登録されていません
カテゴリ文学・評論 » 文学賞受賞作家 » 直木賞 » 126-150回

購入者の感想

松井今朝子さんの本はどれも面白いだけでなく読みやすくて最後まですらすらと読み終えるのが普通なのにこれは違いました。
面白くないのではなく、むしろ登場人物たちのことが気がかりで次にどうなるか知りたいのに、何度か本を閉じて投げ出しそうになってしまいました。
侍の家に生まれて、ほんの数十年前ならそれなりに幸せに平穏に生きていたであろう人々の苦難。
それは今現在の日本の人々と重なってきます。
江戸を日本に、幕府を政府と大企業に、武士を官僚と大企業の幹部に、薩摩長州をアジアの国々に、置き換えてみると。
激変する状況が飲み込めず、明日の保証が打ち切られても、そんなはずはないとおろおろするばかりでなにもできずに滅んでいく。
自分自身の生きる苦い未来を見せつけられているようで、とても辛い。

それでも、最後まで読み終えたときに感じる爽快感は、現実を引き受けて生きていく姿に対する感動がもたらすものでしょう。
苦くて重い分、それが大きい。
これを読んでしまうと、いままで楽しんでいた作品では物足りなくなるかも。
拍子郎なんか、まったく同じ境遇で時期が違うだけなのに、宗八郎とのあの差はなに?
もちろん作者も意識して書いていらっしゃるだろうから、この先何が起こるのか見守りたいものですが。

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