世界史 上 (中公文庫 マ 10-3) の感想
参照データ
タイトル | 世界史 上 (中公文庫 マ 10-3) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ウィリアム・H. マクニール |
販売元 | 中央公論新社 |
JANコード | 9784122049666 |
カテゴリ | ジャンル別 » 歴史・地理 » 世界史 » 一般 |
購入者の感想
友人に勧められて読みました。日本史だけでも2冊にまとめるのは至難の業なのに世界史、しかもホモサピエンスから現在までを網羅するというのは大変なことだと思います。
ややもすると、教科書みたいに単なる偉人、戦争、革命を無味乾燥に年代順に並べてしまう内容になりがちだけれど、時代のダイナミクスを理解させてくれる大変興味深い内容になっています。
そのように出来た理由としては、あえて偉人の記述を最小限に切り捨て、歴史を文明の優劣による必然的な流れと文化の発展による人間の自然な行動原理によって説明したことにあると思います。
たとえばエジプトが古代に王国を築けた理由として、ナイルの両側が不毛で外敵がいないこと、そして下りは川の流れで、上りは風にのって航行できる交通の容易さが大きな原因だったと説明されています。
簡略にいうと、誰が国王になってようが結局はそうなる可能性が非常に高かったということがわかります。
さらにこの本のすごいところは、西洋人が書いた歴史書というのはアジアをおまけ程度にしか扱わないものですが、中国や日本の歴史も少なくとも欧米と同等の扱いで記述していることです。
イスラム教の国々についても充分なページを割いています。イスラム教の超国家的でしかも厳しい戒律が、国家主義的なまとまりを拒み、競争社会による文明の発展を阻害してしまったという説明は議論をよびそうな内容ですが、現在欧米国家によってほぼ完全に袋のネズミ状態にされてしまったイスラム社会をみると、そういった説明も納得させられるものがあります。
下巻は、西欧の優勢とそれが生み出したグローバル化についての説明ですが、それまで人間の発明というものが個人の努力と偶然の産物だったものが、国家や会社という組織が、計画的に戦略や将来の明確な目的に従って教育、訓練された学者などの人材が職業として継続的に生み出されていったことが科学技術の爆発的進歩の要因だと説明されていて、非常に納得させられるものがあります。今のiPhoneなどの製品は、組織と展開の力が地理的制約を飛び越えてグローバルになってきていることを実感させ、21世紀の文明の進歩がさらに加速していくことを思わせます。
ややもすると、教科書みたいに単なる偉人、戦争、革命を無味乾燥に年代順に並べてしまう内容になりがちだけれど、時代のダイナミクスを理解させてくれる大変興味深い内容になっています。
そのように出来た理由としては、あえて偉人の記述を最小限に切り捨て、歴史を文明の優劣による必然的な流れと文化の発展による人間の自然な行動原理によって説明したことにあると思います。
たとえばエジプトが古代に王国を築けた理由として、ナイルの両側が不毛で外敵がいないこと、そして下りは川の流れで、上りは風にのって航行できる交通の容易さが大きな原因だったと説明されています。
簡略にいうと、誰が国王になってようが結局はそうなる可能性が非常に高かったということがわかります。
さらにこの本のすごいところは、西洋人が書いた歴史書というのはアジアをおまけ程度にしか扱わないものですが、中国や日本の歴史も少なくとも欧米と同等の扱いで記述していることです。
イスラム教の国々についても充分なページを割いています。イスラム教の超国家的でしかも厳しい戒律が、国家主義的なまとまりを拒み、競争社会による文明の発展を阻害してしまったという説明は議論をよびそうな内容ですが、現在欧米国家によってほぼ完全に袋のネズミ状態にされてしまったイスラム社会をみると、そういった説明も納得させられるものがあります。
下巻は、西欧の優勢とそれが生み出したグローバル化についての説明ですが、それまで人間の発明というものが個人の努力と偶然の産物だったものが、国家や会社という組織が、計画的に戦略や将来の明確な目的に従って教育、訓練された学者などの人材が職業として継続的に生み出されていったことが科学技術の爆発的進歩の要因だと説明されていて、非常に納得させられるものがあります。今のiPhoneなどの製品は、組織と展開の力が地理的制約を飛び越えてグローバルになってきていることを実感させ、21世紀の文明の進歩がさらに加速していくことを思わせます。
歴史が好きな人はその歴史上の人物に魅せられることも多いと思うが、
この本はそういった人物の「個性」よりも人類の「技術」を重視することで、
世界の歴史全体を俯瞰している。
上巻では、古代史の「なぜ磨製石器」が必要になったか、
また大航海時代の「経度がわからないまま、どのように喜望峰に達したか」
が特に面白かった。何より古代史が占めるページの割合に驚く。
個人的には通史は学参ものを中心に読んでいたので、
この本のあまりに固有名詞が出て来ないことに不安になったりもしたのだが、
そういう今までの読書とは違うというのが最大の魅力だったのかもしれない。
反対に、固有名詞をたくさん覚える現状の学校教育というのは「固有名詞に理解を頼る」
という意味で「簡単な」歴史の勉強法なのかもしれない。
どちらの叙述にもメリットはあると思うが、日本で教育を受けた人には、
こういうタイプの本が刺さるのではないだろうか。
この本はそういった人物の「個性」よりも人類の「技術」を重視することで、
世界の歴史全体を俯瞰している。
上巻では、古代史の「なぜ磨製石器」が必要になったか、
また大航海時代の「経度がわからないまま、どのように喜望峰に達したか」
が特に面白かった。何より古代史が占めるページの割合に驚く。
個人的には通史は学参ものを中心に読んでいたので、
この本のあまりに固有名詞が出て来ないことに不安になったりもしたのだが、
そういう今までの読書とは違うというのが最大の魅力だったのかもしれない。
反対に、固有名詞をたくさん覚える現状の学校教育というのは「固有名詞に理解を頼る」
という意味で「簡単な」歴史の勉強法なのかもしれない。
どちらの叙述にもメリットはあると思うが、日本で教育を受けた人には、
こういうタイプの本が刺さるのではないだろうか。