新装版 北天の星(上) (講談社文庫) の感想

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タイトル新装版 北天の星(上) (講談社文庫)
発売日2015-10-16
製作者吉村昭
販売元講談社
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 江戸時代末期、開国を求めて日本にアプローチしてくるロシアとの間で生じた摩擦に、偶然巻き込まれた男、五郎治。彼の人生はそこから波乱に富んだものとなっていく。
 
 この作品の面白さは、五郎治の人生に起きた出来事の特殊性・数奇性によるところが大きいだろう。ロシア艦に拉致されてシベリアへと連れてゆかれる前半。シベリアでの暮らし、それに続く逃亡劇は息つく間を与えない。さらに終盤は、五郎治の名を我が国の医学史に残すこととなる出来事が起こる。
 加えて、日本とロシアの外交史や天然痘を防ぐための種痘術など、五郎冶をとりまく社会情勢が随所に記され、そのことが作品としての厚みを増しているのである。

 読み終えて、複数の小説を読んだかのような充実感を味わえる力作だ。

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