記憶はウソをつく (祥伝社新書 177) の感想

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参照データ

タイトル記憶はウソをつく (祥伝社新書 177)
発売日販売日未定
製作者榎本 博明
販売元祥伝社
JANコード9784396111779
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 心理学 » 心理学入門

購入者の感想

この本では主に、偽の記憶が作られてゆく、記憶の変容の過程が著述されています。人が真実ではない自白・証言をしてしまう過程、歪められた記憶によって被る可能性のある負の側面に、スポットが当てられています。
ですが、私は読んでいて正反対の事象を思っていました。
それは「イメージトレーニング」です。
記憶が後天的影響によって歪まされ、自分に不利な変容をきたしてしまうのなら、逆に有利な変容を起こすのもあり得るのでは、「逆もまた真なり」なのではないか? というわけです。
いわゆるアスリートと呼ばれる方々は、どうせ起こってしまう記憶の変容をもポジティブに活用して、自己の能力を高め、引き出すことに成功しているのではないか、と。
素人の浅知恵ですが、そんなことを考えながら読んでいました。

それにしても、記憶というものが実は「憶える時」と「思い出す時」の二段構造になっていたとは驚きでした。そして、「思い出す時」の意識や状況といった“フィルター”が、記憶の変容に重要な役割を持っていることも。
言われてみれば確かに、記憶が「憶える時」のみ働くのであれば、誰もがコンピューターのように正確に「思い出せる」はずですものね。

 表題の通り、記憶というものがいかに当てにならないかを、心理学の専門家の立場から、非常に読みやすく・わかりやすく書いた本である。

 私自身にとっては特に衝撃的な内容ではなかったが、自分がやってもいないことを、やったと信じるようになるばかりか、出来事の詳細までも自分で創作してしまうという「記憶の捏造」という事実には、衝撃を受ける読者も多いのではないだろうか。

 本書は記憶というものの弱さ・不確かさを冤罪事件などを例に取りながら、それでいて決して重くならず、さらっと読みこなせるように書いている。私が特に有難かったのは、記憶が歪められる原因・メカニズムがいくつも示されている点で、人間の心の中身がどうやって作り上げられるのかを知ることが出来る。昔からこういう本が欲しかった。

 個人的には、フロイトを真に受けて人間不信になった学生のエピソードがとても良かった。『精神分析入門』の始めのほうに「言い間違い」とその理由付けが書いてあるが、あれは理由付けが荒っぽすぎてまったく説得力がないし、あんなものを真に受けたら人間不信にもなるだろう。本書ではカウンセラーによって「抑圧された記憶」を「捏造」されたことから生じた、とんでもない悲劇も論じられている。親にレイプされたという「抑圧された記憶」が、カウンセラーの誘導によって「捏造」されてしまった結果、子が無実の親を訴え、家庭が崩壊するという悲劇である。精神分析というのは罪作りなものだと思う。

 本書は、知的好奇心を満たしてくれると同時に、生きてゆく上で重要な知識を与えてくれる。誰でも読んで理解できる本であり、誰もが読んで理解すべき本である。普及が望まれる本といっていいだろう。

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祥伝社から発売された榎本 博明の記憶はウソをつく (祥伝社新書 177)(JAN:9784396111779)の感想と評価
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