サド侯爵夫人 朱雀家の滅亡 (河出文庫) の感想
参照データ
タイトル | サド侯爵夫人 朱雀家の滅亡 (河出文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 三島 由紀夫 |
販売元 | 河出書房新社 |
JANコード | 9784309407722 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 文学・評論 » 戯曲・シナリオ |
購入者の感想
2つの戯曲が収められています。サド公爵夫人は人物設定の巧みさが見事な構成を支えています。しかし題材は抽象的なテーマで外国の題材です。それに比べて「朱雀家の滅亡」は、構成の巧みさだけではありません。舞台の選択が、見事なのです。敗戦まであと一年という時代設定は見事な背景をなしています。この緊張感の下で、見事な対話が成立します。この逆説にとんだ作品はいくつもの多面的な魅力を持っています。天皇論、日本文化論、貴族論、美学論、運命論、どの角度から読んでも、深い思索を促すものです。ここには「失われたものへの回顧ともいうべき」ある種の美学が存在します。その美学は、身勝手なもので、現実政治からは距離を置いたものです。その美学の中身はというと限りなく危ういものです。でもどうしようもなく美しいものです。むしろ、この作品の隠れた主人公は昭和天皇なのかもしれません。この作品にどう対処したらいいのか、徹底的に酔うのか、それとも批判的に接近するのか、私は、見事に酔わされました。次に読むときはどうなのでしょう。