初音ミクはなぜ世界を変えたのか? の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル初音ミクはなぜ世界を変えたのか?
発売日販売日未定
製作者柴那典
販売元太田出版
JANコード9784778313968
カテゴリエンターテイメント » 音楽 » J-POP・日本の音楽 » J-POP

購入者の感想

投稿者自身はとくにボカロ曲にもミクにも興味はありませんが、少なからずブームを起こし、狭からず定着した文化的背景を知りたいと思って読みました。
やや強引に自説や文脈に引き寄せてしまったり、それは盛りすぎでしょうってところはありますが、音楽ヒストリーものの本ではよくあることなので、いったんは素直に話を聞くほうがいいと思います。少なくとも、読者を煽る文章ではないと感じます。
初音ミクがある種のアイコンになったのは外野から見ても確かですが、どこかの天才プロデューサー様が広告代理店と一緒になってがっつり計画を立てて売り込んでいったのではありません。
この本で書かれているのは、個々のファン、ボカロソフトメーカーの担当者、絵師、……がそれぞれの立場で、これだと思ったことを好きにやっていて、その点が呼び合って線に、線が呼び合って面になっていく様子であるように思えます。不思議なほどにブームを統括する人がいないのです。
とても乱暴に言えば偶然なのですが、偶然を引き起こしたのは各人がそのように意志を持って動いた必然だったわけです。たくさんの取材や寄稿が、いまどきの自然発生的なムーブメントの背景にある世界をよく描き出してくれます。
いまでもミクそのものには興味が薄い投稿者ですが、とても楽しく読めた1冊です。

 一昔前までは初音ミクは「オタクのおもちゃ」「非実在の美少女」というくくりで世間一般からは語られる事が多く、そんな”彼女”の3Dコンサートに熱狂する若者たちの姿は、一般人からすれば「不自然な歌声の実在しないCG美少女に熱狂するなんて…」とひたすら奇異に感じられたことであろう。初音ミクの本質は(キャラクター性を多少付与されてはいるが)あくまでも電子楽器であり、創作の自由度を飛躍的に高めたがゆえに多くのユーザーに受け入れられたという視点はそこにはほとんど抜け落ちていた。

 しかし近年は、電子音楽のパイオニアである冨田勲により交響曲のプリマに起用されたり、アーティストの渋谷慶一郎によるオペラ「THE END」で”主演”を果たし芸術の都パリで絶賛され、彼女のライブは(曲がほとんど日本語歌詞であるにもかかわらず!)ロサンゼルスに香港、台湾と海外でも大成功。世界を巻き込みつつあるこの現象を「オタクが〜」とか「美少女萌えが〜」といった観点からのみで語りつくすことは不可能であることは明らかだ。

 初音ミクは現代を語る上での社会学的題材の宝庫である。一番目につきやすいのがまずオタク論、そしてインターネット論、ビジネス論、コミュニケーション論、文化論、これまでも国内外で(テレビや新聞など大手目メディアを別にすれば)実に多くの観点から初音ミク現象は多くの識者によって論じられてきた。しかし意外なほど目につかなかったのが、初音ミクが楽器であることは考えれば奇妙な話だが音楽史的観点からのこの現象の検証だった。

 「ある日突然「電子の歌姫」が誕生して、未曾有の現象を巻き起こしたわけではない」 これは本書で繰り返し語られるセンテンスである。

 本書は、初音ミク現象を現代音楽史の文脈から語るという非常に野心的な試みである。それもコンピューター音楽に留まらず、1967年、初音ミク誕生のちょうど40年前にアメリカ西海岸で発生したヒッピーたちのカウンターカルチャー”サマー・オブ・ラブ”にその精神的源流を作者は視る。既存の価値観に囚われること無く自由を尊び連帯する若者…、確かにその姿はインターネットの中で自由にミクを歌わせ創作し合い、共に愉しみを分かち合っていった現代の若者のゆるやかな連帯と二重写しになる。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

初音ミクはなぜ世界を変えたのか?

アマゾンで購入する
太田出版から発売された柴那典の初音ミクはなぜ世界を変えたのか?(JAN:9784778313968)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.