日本人の死生観を読む 明治武士道から「おくりびと」へ (朝日選書) の感想

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参照データ

タイトル日本人の死生観を読む 明治武士道から「おくりびと」へ (朝日選書)
発売日販売日未定
製作者島薗 進
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022599858
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 死生観

購入者の感想

エピローグで本書のタイトルを「近代日本人の死生観を読む」とした方が正確かもしれないと著者自身が述べているように、近代的な自我意識、共同体的なものではなく、個人化した意識を持つ近代人の死生観について述べている。本書によれば「死生観」という概念自体も明治時代に生まれたようだが、逆に言えば、個人化することによって死の観念も個人の中に内省化され、共同体的な感覚から飛び出したむき出しの死が死生観という概念を生み出したようだ。そうしたある種俯瞰的な近代的視点から紡がれている死生観をピックアップして概観して見せているのが本書である。
最後の章で、現代人の死生観として、がんに直面した人間の言葉が紹介されているが、その一人、岸本英夫が文章の中で死生観を2種類に分類している。自分自身に生命の危機が迫っていない状態で語る一般的な死生観と、自分自身が生命飢餓状態に陥っている時の死生観である。死生観という言葉はそもそも一般的な観念を扱う言葉なので、ここで紹介されているような死因の三分の一を占めるがんという現代的な病の苦闘の中で生み出される言葉のひとつひとつは、現代の死生観を考え、私たち自身の死を考えるためのひとつの材料という意味で興味深い。一方、ここで取り上げられている人たちは知識人と言われる人たちだと思うので、岸本が言う「生死観四態」の3と4にあたる。3は「自己の生命を、それに代る限りなき生命に託すもの」、4は「現実の生活の中に永遠の生命を感得するもの」である。(ちなみに1は「肉体的生命の存続を希求するもの」、2は「死後における生命の永続を信ずるもの」)岸本はまさに病魔と闘う今この時に筆を通して生命を感得し、自身の存在を作品に託している。しかし、この3と4は多くの日本人が共感的であるとは思うが、自らの意思を子供に託すような例から、岸本のように身代わりとなる作品に託す例まで実際には様々であるように思うし、個人化する現代人の感覚の表出として多少の隔たりがあるような気もする。こうした例の裏側にある多くの声なき死は一体どんなものだろうかと感じたりもする。

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