墓と葬送のゆくえ (歴史文化ライブラリー) の感想
参照データ
タイトル | 墓と葬送のゆくえ (歴史文化ライブラリー) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 森 謙二 |
販売元 | 吉川弘文館 |
JANコード | 9784642057912 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 文化人類学・民俗学 » 文化人類学一般 |
購入者の感想
「墓と葬送」研究のエキスパートが、「埋葬」の意義が見失われそうな現代日本に対して警鐘を鳴らし、すべての死者の尊厳を見据えた具体的な提言を行っている著作である。「歴史文化ライブラリー」の一冊としては異色な感触があるが、日本における葬祭の歴史を踏まえながら現状の問題に向き合うという趣向で、非常に面白く読んだ。
散骨の法的「容認」に異議を唱え、埋葬されない死者の増加を憂慮する著者は、日本人にとって「埋葬」とは何であったか、その歴史を振り返り、なぜいまそれが危機的な状態にあるのかを検討する。そして、死者供養や先祖祭祀を「家」の義務とする規範を前提とした「埋葬」をめぐる法制という、西洋社会の規準ではありえない奇妙なルールが制定されているにもかかわらず、戦後の社会構造の変容や家族意識の変化によって「家」による「埋葬」が解体されてきたという現実を解説しながら、この困難を乗り越えるための、時代に即した「埋葬」のコンセンサス形成とルールの策定を主張する。
著者による長年の研究の蓄積とリアルな現状認識に基づく提言は、たいへん説得的であり、大量死の時代に向かっていく現代日本人の多くに読んでほしいと思う。
散骨の法的「容認」に異議を唱え、埋葬されない死者の増加を憂慮する著者は、日本人にとって「埋葬」とは何であったか、その歴史を振り返り、なぜいまそれが危機的な状態にあるのかを検討する。そして、死者供養や先祖祭祀を「家」の義務とする規範を前提とした「埋葬」をめぐる法制という、西洋社会の規準ではありえない奇妙なルールが制定されているにもかかわらず、戦後の社会構造の変容や家族意識の変化によって「家」による「埋葬」が解体されてきたという現実を解説しながら、この困難を乗り越えるための、時代に即した「埋葬」のコンセンサス形成とルールの策定を主張する。
著者による長年の研究の蓄積とリアルな現状認識に基づく提言は、たいへん説得的であり、大量死の時代に向かっていく現代日本人の多くに読んでほしいと思う。