写真で見る明治の軍装 の感想

明治の軍装を写真や図で紹介した貴重な書籍でした。上質の紙を使用し、約半分の頁が明治の軍装に関する写真を掲載していますので、軍事史だけでなく、服装史や写真史の観点からも参考になる労作だと思いました。

この著者の藤田昌雄氏の略歴や肩書等が本書のどこにも記載がなく、どのような研究をこれまでしてこられたかが不明です。著者近影として軍服姿の著者の写真が巻末に写されていました。奥付に著者の紹介のない本があるのですね。
少しネットで調べてみると、多くの軍関係の著作がある方で、「軍事研究家・軍事法規研究会顧問」という紹介を見つけました。そういう方でした。

明治の資料の掲載も多く、図なども当時のもので、資料収集や写真収集も大変だと思いますが、そのあたりの苦労話は書かれていません。口絵の軍装の図から始まり、ケレン味なく明治の軍装を解き明かそうとしている書でした。

内容を知ってもらうために章立てを掲載します。
第１章　黎明期の陸軍の軍服（黎明期の軍服、明治三年　陸軍徽章ほか）で、124ページには昭和10年に西南戦争時の陸軍被服を再現したものを掲載してありました。今後、明治の映画等を撮る際やドラマ製作の貴重な資料となることでしょう。先達の必要性がここにあります。

第２章　明治十九年の被服改正（明治十一年から十九年の時期の被服、軍楽部の服制改正　明治十一年　ほか）では、この年にかなり細かく被服が改正されたわけで、当時の資料からその細かい規定が全て掲載してありました。また先ほどと同様に、昭和10年の時代にこの明治19年改正時の陸軍被服を再現したものを掲載してありました。少しずつイメージが湧いてきます。写真は雄弁でした。

第３章　日清戦争と決戦前夜（決戦前夜の被服改正、明治二十六年の被服改正　ほか）では、演習時の写真や肖像写真など、見慣れた軍装が並んでいました。服装規定の掲載もあり、軍装資料としての整理も確かに行われていました。

第４章　日露戦争と二つの戦時服（日露戦争と被服、戦時又ハ事変ノ際ニ於ケル陸軍服制ニ関スル件