歴群[図解]マスター 戦車 (歴群「図解」マスター) の感想

本書の著者は難しいことをわかりやすく書く筆力のある人だと思います。また、巻頭の「はじめに」を読めばわかりますが、物語調の文章も上手な人のようです。読みやすいので私はこのシリーズの前作「戦闘機」も含めて、この著者の本のほとんどを読んでいます。このシリーズの本は、項目ごとの説明の文章が少ないせいで核心を短く書くためか、「関係ない説明」が削ぎ落とされていてとても解りやすい。このような端的な説明をするには、著者は戦車全般について十分に理解していないとだめでしょう。その点、この著者は戦車のムックや専門雑誌でもよく名前を見かけるので安心です。コラムにも興味深いものが多く、著者がそれだけ戦車の深いウンチクを知っているということで、それも本書がわかりやすいことに関係していると思います。それに本書は、よく見かけるランダムな技術説明に終始した戦車入門書ではなく、各章ごとの流れと各項目内での説明の流れがほぼ時系列に沿っています。そのため最初から読み進めると、誕生以来約1世紀にもなる戦車の運用史と技術発達史の両方の流れをスムーズに理解できます。私は特に「第6章部隊の編制」と「第7章戦車の運用と戦術」を興味深く読みました。数多い戦車入門書のなかでも、特にお薦めしたい1冊です。