土の中の子供 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル土の中の子供 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者中村 文則
販売元新潮社
JANコード9784101289526
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » な行の著者

購入者の感想

「掏摸」で中村文則作品と出会い、「何もかも憂鬱な夜に」で救われてから、少しずつ彼の作品を読んでいる。
彼の作品には、他の作品にはない吸引力がある。
「面白い」と思ったり、「素晴らしい」と思ったりする小説はたくさんあるが、「救われる」と思える小説は数少ない。
中村文則作品は、その数少ない救いの小説で、私に生きる力を与えてくれる。

何作品か読んでいくうちに、「そういえば彼は芥川賞を受賞していたんだ」と思い出し、一度受賞作も読んでみようと思い、この作品を手に取った。
「銃」や「遮光」の初期作品の流れの先にあるこの作品は、やはり似たような重い空気に包まれている。
幼少に育ての親から(もしかしたら生みの親からも)暴力を受けて育った主人公は、生きることに精力的ではない。
あえて誰かに殴られたり、転落死しようとしてビルの上から身を乗り出したりして、自分ではどうすることもできない圧倒的な力に身を曝し、
その中で何かが生まれることを期待している。
でも、いったい何を期待しているのかわからない。
ただ、もう無為に生きることに嫌気がさしている。
この息苦しいような毎日の描写には、何か胸に迫るものがある。
この生きづらさの描写は、けっこう私には生々しいものだった。

中村さんのあとがきを読んでいると、彼にとって「小説」は生きる糧なのだと感じる。
そして生きる術でもある。
自分の人生をすべてかけて、小説を書いていこうという想いが伝わってくる。
だからこそ、何かこちらに訴えてくるような強いメッセージ性を感じるのだろう。

この「土の中の子供」にも、強いメッセージ性がある。
読んでて、息詰まるような緊迫感がある。
なぜ自分は生きなければならないのか、なぜ自分は世界から痛みを与えられなければならないのか、
どうすれば生きることに光を見出せるのか、その答えを得ようと必死で模索している。
その問いに終わりはない。
暴力の中で、かけられるべき愛情をかけられない中で、それでも生きる意味はなんなのか、

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