基本憲法I 基本的人権 の感想

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　ついに日本評論社の基本シリーズから憲法が出た。受験業界で人気の伊藤建弁護士が著者の１人として入っていることもあり、受験生の悩みどころをわかった記述が多いと感じられた。すなわち、憲法という科目の特性上、知識があっても、論文で使えるようになるレベルまでは距離がある。この距離を埋めるための教材が少ないため、司法試験合格者でも憲法はよくわからないまま合格してしまったという人が続出していた。このような状況の中、近年この距離を埋めるための思考方法を示し、受験業界で人気になったのが伊藤建弁護士である。基本憲法の各講の最後に書かれている演習編は、上記の思考方法を実践した内容となっており、憲法の事例問題の思考方法を学ぶことができるものとなっている。
　また、学者である木下智史先生が第１～１４講の文責を負っているため、記述の正確性も担保されているといえよう。特に第１講の判例分析は秀逸であり、今後どのようにして判例を学習していけばよいのかの指針になるであろう。
　ただ、今まで出された基本シリーズは、初学者が読んでもわかりやすく、この本を読めば受験レベルの知識は身につき、後は判例集と問題演習で足りると感じるものであった。これに対して、基本憲法は、基本的事項の説明を省略した記述が一定程度見られるため、初学者がいきなり読んでわかる内容にはなっていない。入門レベルについては他の本で学ぶか、講義を聞く必要があると思われる。
　内容面でも、なかなか割り切った記述が見られ、答案にそのまま使っていいのか悩むものもある。どの本でも言えることだが、その本の見解を絶対視せず、自分の頭で考えることを忘れないことが重要である。また、通読に耐えられるようにするため分量が抑えられているのであろうが、理論の理由が省略されているところがあり、答案に使いづらいなと感じた。
　最後に、色々と本書の問題点も指摘したが、総合的にみると今までなかった憲法の「学習参考書」となっており、憲法に悩んでいる受験生にはぜひ読んでほしい１冊といえる。