プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア の感想
参照データ
タイトル | プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 小泉 悠 |
販売元 | 東京堂出版 |
JANコード | 9784490209501 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門 |
購入者の感想
2014クリミア編入以降、ロシア関連では「クレムリン・メソッド」(北野幸伯著、集英社インターナショナル、2014.12)、「プーチンとG8の終焉」(佐藤親賢著、岩波新書2016.3)を読んだ。上記の著者が、国際関係論の研究者とジャーナリストだったのに比べ、本書の著者はロシアの軍事・安全保障の研究者であり、特に軍事面に重点を置いた解説本となっている。地図帳を脇に置いて本書(特に第4章、第5章)を読めば、ロシアにとっての黒海・カフカス地域(ウクライナ問題、対ジョージア戦争(グルジア)、チェチェン独立紛争、アルメニア=アゼルバイジャン紛争など)、中央アジア地域(ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスなど)、極東地域(ヴォストーチュヌィ宇宙基地、経済開発)の懸案について理解が深まると思う。
冒頭で、ロシア人の『勢力圏』という考え方を解説する。東欧諸国が次々とEU、NATOへ加入しているのは、もはやこれを引き留める力がないロシアにとって屈辱的な状況である。だが、ウクライナのような旧ソ連構成国への手出しは何があっても許さない、という考え方である(バルト3国は既に入ってしまったが)。
それなら軍事力はどうなのだとなるが、「ロシア軍は見かけほど強くないが、見かけほど弱くもない」。もはや大規模通常戦力を維持する国力はなく、NATO軍に比べて劣勢であるが、だからこそ「弱者の戦略」としてのハイブリッド戦争を採用するだろうという。ウクライナで行ったように、NATO軍と正面対決することはせず、正規軍を覆面の義勇兵として送り込むという非対称型のゲリラ戦である。他方、通常戦力で劣勢であるからこそ、「いざとなれば無人地帯への警告的な核攻撃も辞さず」というまさかの核戦略を採用する可能性もあるという。
旧ソ連構成国との関係も容易ではない。もともと民族が異なるから別々の国になっているのに、地続きだから多民族が混じっており、ロシア系住民がいたりするからややこしい。黒海・カフカス地域と中央アジア地域は遠く離れており、民族・宗教も異なるから、CSTO加盟国内ですら、各国の利害がバラバラで統一行動はとれない。
冒頭で、ロシア人の『勢力圏』という考え方を解説する。東欧諸国が次々とEU、NATOへ加入しているのは、もはやこれを引き留める力がないロシアにとって屈辱的な状況である。だが、ウクライナのような旧ソ連構成国への手出しは何があっても許さない、という考え方である(バルト3国は既に入ってしまったが)。
それなら軍事力はどうなのだとなるが、「ロシア軍は見かけほど強くないが、見かけほど弱くもない」。もはや大規模通常戦力を維持する国力はなく、NATO軍に比べて劣勢であるが、だからこそ「弱者の戦略」としてのハイブリッド戦争を採用するだろうという。ウクライナで行ったように、NATO軍と正面対決することはせず、正規軍を覆面の義勇兵として送り込むという非対称型のゲリラ戦である。他方、通常戦力で劣勢であるからこそ、「いざとなれば無人地帯への警告的な核攻撃も辞さず」というまさかの核戦略を採用する可能性もあるという。
旧ソ連構成国との関係も容易ではない。もともと民族が異なるから別々の国になっているのに、地続きだから多民族が混じっており、ロシア系住民がいたりするからややこしい。黒海・カフカス地域と中央アジア地域は遠く離れており、民族・宗教も異なるから、CSTO加盟国内ですら、各国の利害がバラバラで統一行動はとれない。
ロシアから見たアジア・太平洋地域の重要性、日中露の関係についての分析を読みたくて購入した。
日露戦争や米ソ冷戦時代、旧ソ連がロシアになっても、しつこく大国イメージが残る頭にはとても新鮮で、刺激的だった。
ロシアが大国と呼べるほど強国ではないとは、さらに意外だった。
日本人のロシアに対する理解の難度は、ロシアを積極的に見つめても公開される情報は少なく、そもそも相違点がはっきりし過ぎていて高まってしまう。
そこを紐解きましょうと論じた文章を目で追っても、挫折することばかりで、秋田犬とツーショットのプーチン大統領の写真を眺めても、遠い人のままだった。
しかし、本書はそのプーチン大統領の本質を、紐解けない思考で動いている大統領として、そのまま描いている。
最近はそうでもないが、海という壁を持つ日本は、隣国との諍いに備える軍事力増強が脅威にしか見えなくなりがちだ。が、隣が攻めて来る土地に住めば、武器も軍隊も、無い方が恐ろしい。
「ロシアの安全保障と宗教」でも、ページを割いて論じる必要を知って驚き、読んで納得した。
著者はロシアの特殊な概念を乗り越えて、ロシアの戦略や国が置かれた状況を、自らの体験と共に説明している。
人民服を脱いだ中国の人びとが次々と明るい色を身に付けたように、新しい知識は読み応えがあった。
日露戦争や米ソ冷戦時代、旧ソ連がロシアになっても、しつこく大国イメージが残る頭にはとても新鮮で、刺激的だった。
ロシアが大国と呼べるほど強国ではないとは、さらに意外だった。
日本人のロシアに対する理解の難度は、ロシアを積極的に見つめても公開される情報は少なく、そもそも相違点がはっきりし過ぎていて高まってしまう。
そこを紐解きましょうと論じた文章を目で追っても、挫折することばかりで、秋田犬とツーショットのプーチン大統領の写真を眺めても、遠い人のままだった。
しかし、本書はそのプーチン大統領の本質を、紐解けない思考で動いている大統領として、そのまま描いている。
最近はそうでもないが、海という壁を持つ日本は、隣国との諍いに備える軍事力増強が脅威にしか見えなくなりがちだ。が、隣が攻めて来る土地に住めば、武器も軍隊も、無い方が恐ろしい。
「ロシアの安全保障と宗教」でも、ページを割いて論じる必要を知って驚き、読んで納得した。
著者はロシアの特殊な概念を乗り越えて、ロシアの戦略や国が置かれた状況を、自らの体験と共に説明している。
人民服を脱いだ中国の人びとが次々と明るい色を身に付けたように、新しい知識は読み応えがあった。