北朝鮮絶望収容所―完全統制区域の阿鼻地獄 の感想

　悲惨な現実の中に在って、ヒューマニティーはひときわ美しく輝く。　それがこれ程鮮やかに描かれている作品は、稀に見る宝と言っていい程です。　韓国で一大センセーションを巻き起こしたのも頷け、その功績は大いに称えられるべきだと思います。
　著者の誠実さ、周りに流されない意志力、女性への思いやり、そういったものが、北朝鮮の非人間的な鎖を打ち破り、その成果としてこの本が生まれました。　そこまでに費やされた苦悩、恐れ、そして勇気は並大抵のものではなく、虐げられた人々を救わねばならないという使命感が、それを可能にしたと書かれています。
　これ程の自己への勝利を収めた著者にあって、未だに夜は悪夢から逃れられないと言います。　それは恐らく、北朝鮮に残してきた妹の身を案じているからで、更には親戚達にまで政治犯の烙印が押され、絶望収容所に送られるであろう事が負い目になっているからでしょう。
　北の政治が行っている事は明らかに犯罪で、それは国連の査察で裁かれるべきでしょう。　しかし北の偽政者たちは、それを恐れて核兵器まで獲得してしまいました。　これは未だに、支配者達の洗脳に人々が従わされている事を示しています。　なんとかその洗脳を解こうと、多くの人々が取り組んでいますが、「人が人を支配するのは間違っている」と思われる方は、社会を通して自然に参加してくれていると思います。
　それは、自由社会の情報が直接北朝鮮の人々にも届くようになって来たからで、全ての人が平等で自由な世界の存在は、北朝鮮の人々の心を洗脳から救い出す力を持っているからです。

軽い気持ちでたまたま手に取って読んでみた。そのあまりの壮絶さに呆然。
これらが実話だとは思えない、思いたくない。
すぐ近くの国がこんなだったとは。
この人たちが、そして北朝鮮の国民が人間として「普通」に暮らせる日が早く来るのをひたすら祈るだけです。