フライト [DVD] の感想

『英雄は善人である』
何故か私達は、兎角そう思いがちである。

絶体絶命の事態に陥った旅客機を、
ベテラン機長が的確な判断と優れた操縦技術で不時着させた。
数名の死者は出たが、被害を最小限に抑えた奇跡の生還だった。
ところが事故の調査が進むうち、機長が抱える個人的な問題が明るみに出る。

英雄は善人でなければいけないのだろうか。

神業のような事をやってのけても、所詮人間なのだ。
家庭は崩壊し、別れた妻子との関係は最悪のまま。
一人息子からは父親としても、男としても人としても認められていない。
“依存” 酒に溺れ、薬に一時の力を貰う。
助けようと差し伸べられた手を振り払う、抜けられない中毒のループ。

事故原因とは関係ないのかもしれない。
それでも世間の注目の中で自らの非を認めるという事の恐怖。
普通の人間だからこそ感じる当たり前の恐怖、貫けない正義。
色んな事からの逃げ場所が “依存” ならなおのこと。
そんな彼が普通の善き人としての道を歩むまでの物語。

冒頭のシーンは、過去の事故のデータを基に作られたと聞くと、
迫力以上の恐怖を感じる映像です。
そして色んな物に依存する、多くの中毒患者を抱える大国では、
多くの場所、職場にそうした問題を抱える人が “静かに” 日常を送っています。
問題定義をしながらエールを送る、そんな作品でもありました。