共感の時代へ―動物行動学が教えてくれること の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル共感の時代へ―動物行動学が教えてくれること
発売日販売日未定
製作者フランス・ドゥ・ヴァール
販売元紀伊國屋書店
JANコード9784314010634
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » 動物学

購入者の感想

ド・ヴァールは、行動生態学者のうちでも、動物と人間の「倫理」を語らせると第一人者である。それは、彼がおそらくダーウィンのひそみに倣って、道徳哲学関係の文献を人一倍読みあさってきたからだろう。彼の新著は、彼の「動物・人間の倫理学」の第二の主著とも言える仕事である。第一の主著は、『利己的なサル、他人を思いやるサル』で、これは現代の倫理学の文献としても第一級のもの。そして、今回の新著では、倫理の構成要素となる行動特性や心的特性が進化の過程でどのようにして積み重ねられてきたかという推察が、第一の主著よりもさらに幅広く、深く掘り下げられている。

その一例は、第5章で出てくるゾウで、ゾウが人間の幼児やチンパンジーと同様、鏡に映る自分を認識できるという実験である。これは、他者の情動を見て自分のうちでも類似の情動が生じるという共感能力、「感情移入(アインフュールンク、あるいはエムパシー)」が、進化のかなり古いところで人間と他の動物に共有されている、という著者の主張の脈絡に置かれる。「共感」をいうからには、「自他」の区別が理解されていなくてはならず、鏡像の認知ができなければ「自分」という意識が帰属させられないからだ。要するに、ド・ヴァールは、「ゾウにも十分な共感能力があり、道徳性の点でも、ゾウと人間は連続的だ」と言っているのだ。

ド・ヴァールの用法では、「共感、エムパシー」と「同情、シムパシー」ははっきり区別され、前者がより身体的要因に近いのに対し、後者はもっと複雑でより多くの構成要素をもつ(したがって、進化の過程でもっと後に生じた)とされている。ロシアの入れ子構造の人形(マトリョーシカ)のように、共感はより内側に位置しているのである。こういった事実関係の推測は倫理を考える上で重要であり、倫理学研究者も文献解釈だけでなく、こういった認識を共有する必要があるだろう。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

共感の時代へ―動物行動学が教えてくれること

アマゾンで購入する
紀伊國屋書店から発売されたフランス・ドゥ・ヴァールの共感の時代へ―動物行動学が教えてくれること(JAN:9784314010634)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.