「米中経済戦争」の内実を読み解く (PHP新書) の感想

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タイトル「米中経済戦争」の内実を読み解く (PHP新書)
発売日販売日未定
製作者津上 俊哉
販売元PHP研究所
JANコード9784569836515
カテゴリビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 各国経済事情 » 世界

購入者の感想

中国watcher津上氏の新作である。氏は今年前半の3ヶ月アメリカに滞在し、トランプ大統領の誕生を間近に見て,本書を執筆したそうだ。タイトルはおどろおどろしいが、トランプが就任前に中国を為替操作国として告発すると言っていたことに由来するものにすぎない。前書きで氏は2009年以来の中国経済の予想を概ね正しく推定して来たと自負する。それはそのとおりと思うが、そら見たことか言ったとおりだろ,では本は書けないと序文で言っている。そこで本書の新機軸は,氏の専門である中国経済の現状分析は後半に移して,習近平体制の第一期を総括し,更に今後の予想をすると言う野心的なものだ。

氏によれば、習近平は自身の政治的生き残りのために、党内の経済改革派と守旧派の連立状態をうまく生み出し運営していくと言うスタイルなので,右に行ったり左に行ったりするように見えるのだという。これが事実とすると今後も一貫しない姿勢になると思われ、すると正確な予測も困難となる。トランプ体制と言う今後の先行きがよくわからないアメリカとの相互作用も考えると今後も不確実な国際政治情勢が予測されることは確かだろう。

一方、中国の経済情勢はIMFのいう2スピード・エコノミーと言う状態にある。すなわち、スマホをベースにした民間企業主導の発展しつつあるニューエコノミーと鉄鋼などの国営企業によるオールドエコノミーだ。後者が中国の財政赤字を増大させている改革の必要な部門だが,その改革がうまくいかない。中国は社会主義市場経済と言う鵺のような政治経済体制で、これが共産党支配の基礎を成しているからだ。共産党員のイデオロギーの中核が国有企業であり,その蓄財の根源でもある。そこで市場経済なら破綻処理されて再生していく企業がゾンビ化していく。従って,中国経済は全体としては既にピークアウトしているが、国際的な政治的発言力は漸増していくだろうと言うのが著者の見立てだ。

北朝鮮問題などにも大きく誌面を割き、問題点を整理しているが,一朝一夕にこの問題の解決法を提示することなど誰にもできないだろう。本書は,中国の政治と経済を国際的枠組みの中でデータをもとに冷静に分析するもので,分かることと分からないことを明確にしている点で好感が持てた。

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