世界一訪れたい日本のつくりかた の感想

子供時代に日本を訪れ、オックスフォードで「日本学」を専攻し、銀行業界の証券アナリストとして、国宝文化財修復事業のＣＥＯとして28年の年月を日本で過ごし、稀有な実体験を持つイギリス人だからこそ書き得た観光ビジネスの教科書に仕上がっている。読み進むにつれて、氏の持論が不思議なくらい加速度的に説得度を増していくのは、氏が観光ビジネスの受け手としての海外からのビジターの視点と、サービスを提供する側の視点の両方に精通しているからに違いない。加えて、氏の得意とする分かり易く豊富なデータによる裏付けと、大勢の人たちとの対話の厚みが後押しをしているのだろう。

2020年開催の東京オリンピックを契機に、観光にとどまらず今日本では広くサービス産業の至る所で国際化の視点が切実に求められている。このことを「文化・スポーツ・観光省」設立の提言とともに、「日本は変化が始まれば猛スピードで変わる国だ 」とのエールの言葉で結んでいるのが読者として嬉しかった。

花咲か爺さん