惡の華(11) の感想

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参照データ

タイトル惡の華(11)
発売日2014-06-09
製作者押見修造
販売元講談社
JANコード登録されていません
カテゴリ »  » ジャンル別 » コミック・ラノベ・BL

購入者の感想

(注意、ネタバレ有)

「思春期だけの特別なもの」と、「それなりに悪くない現在」との折り合いをどうつけるか、押見修造は『漂流ネットカフェ』で一つの回答を示したが、同作者はこの『惡の華』でその主題をもう一度、今度は振り返る形ではなく進行形で描こうとした。
これは「特別」に憧れ続け、ほんの一時期本当に、「変態」という「特別」なものになることができた春日君と仲村さんの物語。
彼と彼女が変態として特別な存在になったまま、つまり物語から得られる興奮がピークの位置で物語を閉じることもできただろうが、それをせず、二人が「クソムシ」でも「特別な存在」でもなく、ありふれた「ふつうにんげん」へと変態してゆく様が描き切られている。
春日君と仲村さんが劇的な再会を果たし、再び変態の海へと幸福に溺れていくという展開もあり得たかもしれない。
或いはその再会が二人の人生を狂わせ、破滅へと向かう展開もあり得たかもしれない。
しかし結果として、二人はかつて唾棄したぬるま湯のような現実に着地し、その中で生きていくことを選んだ。
その先はきっと「物語」として面白くない。なぜならその「物語」は私たちの日常に溢れていて、だから、ブルマを盗んだ少年と、彼を脅す少女の物語のように面白くはない。
「あのころはどうかしていた」「あのころはよかった」「でも今もそんなに悪くない」
それこそが、ふつうにんげんの生きる場所なのだ。
だからこそこの物語は、かつて春日君であり、仲村さんであり、そして今はそうでない私たちにとって、或いは現在進行形で胸の中に惡の華を咲かせている少年少女たちにとって、最高のおとぎ話たり得たのだと思う。

春日の夢は現実のものになるのか?
あるいは、それに近づくことができるのか?
新人賞を取ることも、出版社で文芸の編集をすることも、限りなく可能性は低いが……。
ただ、理想の道を突き進むことはできないまでも、側道のようなところを通ってそれなりの生き方を見つけていけるような気もする。
また、仲村さんは結局今の自分に満足しているのか?

そんなのが明確に示されていたら野暮だし、読者に嘘を伝えることになるが、やっぱり答えを知りたい。
しかし、答えは読者が著者が示したヒントから導き出さなければならない。
モヤモヤする。

ただ、結局中学時代の仲村さんにとって春日が救いだったということはわかった。
仲村さんは怪物でもサイコパスでもなかった。

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