入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる (光文社新書) の感想

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タイトル入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる (光文社新書)
発売日2015-05-19
製作者中村 和彦
販売元光文社
JANコード9784334038588
カテゴリ » ジャンル別 » ビジネス・経済 » マネジメント・人材管理

購入者の感想

 個人を対象にした方法から、組織を対象にした方法に著者の関心が移ったという告白(p.7)に大賛成である。関西生産性本部が派遣した訪米調査団の経験が報告されているが、そこで訪問したEAP(Employee Assistance Program:従業員援助プログラム)の話が興味深い。EAPは職場のメンタルヘルス問題を解決するために導入された、個人を対象にするカウンセリングであるが、思うように効果が上がらないために組織開発部門が設置されたということである(p.66-8)。こんなこともあって著者は個人対応から組織開発に転向したようだ。
 ただし、困っている従業員がいて、その相談に乗るという行為が無意味とは思えない。問題はEAPの活用の仕方にある。EAPのスタッフが、本書で紹介される内部組織開発コンサルタントのような役割を果たせばよいのだ。もっとも米国では専門家の活動領域の線引きは厳しいので、EAPのスタッフが組織開発コンサルタントの働きをすることは無理かもしれない。また、日本ではEAPのスタッフの意識が組織に向いていないので、日本でも無理であろう。

・自分の組織と仕事にコミットさせよ
 「第1章 今なぜ組織開発なのか」は必要ないだろう。つまり、日本の現状はこんなに問題があるのだから、組織開発に取り組まなければならないという論法になっている。だったら、うちの会社の問題ではなく、国が問題なのだからやらなくていい。「お上がやれというならやりますけど」となるだろう。正に組織開発が必要な状況を強化するようなものだ。
 せっかく著者は、「組織の六つのマネジメント課題」を挙げているのだから、ここから説得すべきではなかったろうか。「目的・戦略」「構造」「業務の手順・技術」「制度(施策)」「人(タレント)」「関係性」の六つである(p.23)。自分の組織に、自分の仕事に、しっかりコミットさせることが組織開発実施者の役割であろう。既に日本企業はグローバル化しており、日本がどうだなどと考えている場合ではない。

・従業員をダブルバインドに追い込むな

組織開発(OD: Organization Development)についての本。ただし、よくある戦略とか業務改善を中心に据えた組織論の本ではない。OD自体は人によって微妙に定義の違いがあることも各所で説明されおり、現代ではプロセス面だけでなく「戦略」「構造」「組織」といったハードな側面の変革にも同時に取り組むというのが現代の組織開発の一般的な定義になっているようだが、本書はその中でも特に「人(タレント)」と「関係性」といったソフト的な側面を重視しながら組織のプロセスを改善してゆくところに焦点を当てているところに特徴がある。内容的には、仕事に対する意欲、協働作業の諸問題、多様性などによって生じるプロセスのロスを低減したり、逆に相乗効果を高めることで組織の能力を改善して成果や業績に好影響をもたらすようにするというものになる。また、著者によるとこのプロセス改善において多くの定義で共通しているのは、以下の3点だという。
・行動科学の理論や手法を用いること
・組織の硬化性や健全性を高めていくこと
・組織のプロセスに対して計画的な働きかけをする取り組みであること

メンバー同士の対面のコミュニケーションを通して共通のビジョンや目的への合意を高める。「診断型組織開発」と「対話型組織開発」。組織開発の根底にある4つの価値観(人間尊重の価値観、民主的な価値観、クライアント中心の価値観、社会的・エコロジカル的システム志向性)。ODの歴史。日本で発展したQCとTQC。カミングス&ウォーリーによる組織に起きる4つの諸問題と6つのマネージメント課題の以下の関係。
1.戦略的な諸問題→「戦略」
2.技術・構造的な諸問題→「構造」「業務の手順・技術」
3.人材マネージメントの諸問題→「制度」と「人」
4.ヒューマンプロセスの諸問題→「関係性」

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