Theories of International Politics and Zombies: Revived Edition の感想

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現在、欧米（特に米）のホラー業界は空前のゾンビブームである。「え？ヴァンパイアブームじゃないの？」という方は十代女子向けの某ライトノベルシリーズが念頭にあるのだろうが、青白くてジェントルマンな美青年ヴァンパイアはある程度限定的なブームで、ゾンビの方が遥かに蔓延している。そしてゾンビは社会不安の象徴だ。
本書は「ゾンビ発生」という事態になった場合、国際政治学のそれぞれの学派がどのように動くか、というナンセンスな想定をしつつ、実はなかなかアカデミックな国際政治学の入門書になっている（詳細は他のレビュアーの方をどうぞ）。各学派の世界観、思考回路、行動様式、解釈の癖などがユーモラスに解説され、同時に、政治経済学系統のいかにもな疑似サイエンス的言語空間が意識的に提示されており、学生の皆さんにはきっと役に立つ一冊。
個人的には、「こういうのはどこまで『学問』として有効なんだ？」という疑問が少々あった。読んでいて、国際政治学なる学問が実践者への道に繋がるような感触がやって来ないのである。国際政治学というのは、国際政治学の教授とかシンクタンクの研究員とか国際政治コンサルタント（なんだそりゃ）とかとかを目指すような人の為に存在するのだろうか。何であれ、実践者と観察者は異なる領域にいるものだ。アーティストと批評家くらいに違う。こういう学問は実践者向けなのか、観察者（解説者）向けなのか…などとぐるぐる。まあ150頁程度だし、「リバタリアンはゾンビ襲撃には役立たず」という著者の予想やその根拠も笑えたし、非常に楽しく一気読みさせて頂いたが。