冷戦とクラシック―音楽家たちの知られざる闘い (NHK出版新書 521) の感想

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参照データ

タイトル冷戦とクラシック―音楽家たちの知られざる闘い (NHK出版新書 521)
発売日販売日未定
製作者中川 右介
販売元NHK出版
JANコード9784140885215
カテゴリエンターテイメント » 音楽 » 音楽理論・音楽論 » クラシック音楽

購入者の感想

クラシック音楽ファンには大変興味深く読める本だ。カラヤン、ムラヴィンスキー、バーンスタインを軸に、その周辺の音楽家たちも触れつつ、時系列で戦中戦後から冷戦時代の終わりまでを描いている。
独裁者や体制の圧力に対する音楽家たちの各人各様の身の処し方や苦闘がわかって面白い。
ムラヴィンスキーは旧ソ連を代表する音楽家のように見えたが、体制とは距離を置き続けた孤高武骨の巨匠だった。
他方、バーンスタインはアメリカを代表する音楽家ではあるが、その自由な精神ゆえに赤狩りの対象にされたりしつつも闘い続けた活動家だったと言える。ベルリンの壁崩壊後の第九コンサートはとても感動的だった。
政治家もそうだが、激動の時代を戦い抜けた20世紀音楽家たちの人間的な存在感は大きく感じられる。

私は本書を、本書の商品紹介から、冷戦と冷戦時代に活躍していた巨匠指揮者であるムラヴィンスキー、カラヤン、バーンスタインの関わりを描いた本で、三人にそれぞれ独立した章立てをした本だと思っていたのだが、『はじめに』と目次を見ると、そうではなかった。 

まず『はじめに』で筆者は、「この本には多くの音楽家が登場する」とし、「米ソの代表としてバーンスタインとムラヴィンスキーの二人が中心人物となる」としつつ、「ショスタコーヴィチもこの本の中心人物のひとり」となり、「第三の指揮者が、冷戦の象徴である「壁」のあるベルリンの、その西側にいたカラヤン」であり、「そんな音楽家たちの人生を、歴史物語として描いていく」のが本書だと語っているのだ。 

目次を見ると本書は、各章を『戦後の始まりー1945年』から『三人の指揮者の死ー1987~90年』まで、時代の区切りごとに序章を含めた六章に分けている。実際に本書を読み進めてみると、それぞれの時代ごとの世界情勢と、そうした時代・世界情勢の移り変わりの中における前記四人の動向と、国家の威信をかけた4年ごとに開催されるソ連のチャイコフスキー・コンクール及び5年ごとに開催されるポーランドのショパン・コンクールの動向を要所要所に挟みつつも、そうした時代・世界情勢の移り変わりの中で、当時のその他のクラシック音楽家たちが、どのようにそれらと向き合い、活動していたのかも万遍なく描いている。往時のきら星のような錚々たる名音楽家たちの名前とその活動の様子が次から次へと描かれていくので、非常に興味深く、かつ大変面白く読ませてもらった。 

ちなみに、私は本書を読みながら、随所で、よくぞこれだけの往時の資料を探し出して、各時代時代のクラシック音楽界の動向を微に入り、細に入り、まとめられたものだと感心させられていたのだが、巻末の参考文献一覧を見ると、四人を始めとした音楽家などや、オーケストラ、歌劇場、音楽祭、コンクール関係の文献だけでも実に91冊が挙げられている。やはり、これくらいの参考文献を読み込まなければ、これだけの内容の本を上梓することはできないのだろうと納得させられる本書だった。 

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