世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今 (立東舎) の感想

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参照データ

タイトル世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今 (立東舎)
発売日販売日未定
製作者都甲 幸治
販売元リットーミュージック
JANコード9784845628384
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 日本文学研究

購入者の感想

 早大の文学学術院教授で翻訳家でもある都甲幸治氏を中心に14人の読巧者が3人一組になって8つの世界の文学賞を読み解く鼎談スタイルの書です。
 俎上に載せられた賞は、「ノーベル文学賞」、「芥川賞」、「直木賞」、「ブッカー賞」、「ゴンクール賞」、「ピュリツァー賞」、「カフカ賞」、「エルサレム賞」の8つです。

 書名にあるとおり、各賞の解説というよりは、「受賞作から読み解く現代小説の今」が主題です。この書で掲げられている受賞作のいくつかは私も読みましたが、それでもさすがにすべてには目を通しているわけではないため、鼎談の内容を読んでも十分に理解ができてとはいえないかもしれません。

 むしろ強い関心を持って読んだのは、各賞の傾向めいた点を記した箇所です。
「芥川賞」は「フランス文学やイギリス文学みたいなものを日本語で書こうとしている人を褒めてあげる賞なんじゃないか」、一方「直木賞」は「日本から見た日本だけではなくて、アジアから見た日本という視点がある気がする」という見立てをしている点を興味深く読みました。「ブッカー賞」が「確実にその年の一番いい作品を選ぶ」賞で、人間関係や義理を重視しがちなほかの賞と違う点で、「世界で唯一」とまで言い切っているくだりを読むと、「ブッカー賞」受賞作が俄然読みたくなってきます。

 「ノーベル賞」は「世界の文学賞っぽい雰囲気を出しているけれど、実はかなりヨーロッパ寄りな存在」(17頁)であり、「人権の重視といった古典的な価値観を重視する」点があると喝破する点は読んでいて密かに快哉を叫んでしまいました。
 また、作家たちは良い作品を書いただけなのに、予期せぬ形で賞レースに巻き込まれて迷惑に感じる場合もあるという話もあるそうで、文学賞に限らず、賞を与える側の思惑めいたものにも目を向ける必要があると感じた次第です。

 今年2016年9月発刊時に「ノーベル賞を今後受賞してほしい人」として鼎談参加者の中村和恵氏がボブ・ディランの名を挙げていることが目を引きました。中村氏自身が詩人だけに、慧眼に感服しました。

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*フィリップ・ロスの近年の作である『The Plot

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