TVアニメ「月がきれい」サウンドコレクション の感想

一昔前の「SPレコード」のような、昭和世代には懐かしいディスク。主人公たちを示唆する桜の花びらが2枚と、作品タイトルがデザインされただけの、何も背景のない、文字通り「まっさらな」状態のジャケット。その佇まいからして、作品との親和性が見事な、アニメ作品「月がきれい」の劇伴集

作品世界を象徴する、青春群像の瞬間・機微を切り取ったような、精緻で音の”煌めき”を重視したサントラは、ほぼアコースティックな器楽の重ね合わせによって再現され、大多数の曲は極めて優しい温もりに包まれた響きを奏でています

そっと音が「寄り添う」ように響くピアノと、絡み合うストリングス、セピア色の夕景に溶け込むような、しっとりとしたアコギとオーボエの調和、歯切れよく瑞々しいカホンの刻みとフルートを主体としたオケ、切なる内面を浮き彫りにするようなオルゴールの調べ、不安で心細い心情を巧みに表する、ハープとチェンバロの絡み合い・・・

もう、挙げればきりがないほど、全ての楽曲がチャーミングで愛おしい。一人っきりで夜のしじまを、この音楽と漂っていると、来年50のおっさんが自然と体育座りして黄昏てしまうような、そんな、色褪せてしまった温かな憧憬を思い起こし、感慨深い気持ちにさせてくれます

・・・そして、30曲目からは、満を持して積極的にこちらの涙腺を破壊しに来る、東山奈央さんが歌うカバーソングが5連コンボ、という強烈な布陣。正直、この5曲だけでも購入した価値があったと確信しています。アニメ本編のシーンがオーバーラップして、「初恋」から「未来へ」までの怒涛のバトンリレーでおっさんガチ号泣（笑）　気軽に外では聴けないなこれ・・・

まぁ、3月9日に関しては、原曲にはないアレンジである、フレーズのリフレインと楽曲の抜出の関係で放映版をそのまま収録とはならなかったようで、その点は仕方ないかも知れませんね。シナリオの空気感を相乗させる為の楽曲アレンジは、放映版のみの許諾なのでしょう

伊賀拓郎さん、東山奈央さん、本当に有難う御座います。これから生涯聴き続けます