日本のいちばん長い日 [DVD] の感想

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参照データ

タイトル日本のいちばん長い日 [DVD]
発売日2005-07-22
監督岡本喜八
出演三船敏郎
販売元東宝
JANコード4988104032812
カテゴリDVD » ジャンル別 » 日本映画 » ドラマ

購入者の感想

岡本喜八版と比較するさえ恥ずべき作品ですが、仕方がないので触れてしまいます。
お許しください。小生は岡本版の絶対信奉者ではありませんが、よいものはよい、
悪いものは悪い、そういうことには忠実でありたいと思います。

■基本的難点
すでに多くの人が描いておられますが、セリフが聞き取り不明です。
なにも理解せずに、ただ早口でまくし立てているだけのようにしか聞こえません。
日本の命運を決した「あの日」のことを描いているのに、これでは何にもなりません。
紙芝居よりも始末に悪いです。

■季節感の喪失
問題の「あの日」は、前後も含めて、ひどく暑かったと聞かされています。
しかるに画面の中の様子は、まるで秋風が吹いているかのようです。ほとんど、
誰も汗をかいていません。扇風機もうちわも(森師団長以外)出てきません。
涼しそうです。また、チリひとつ舞っていません。とてもきれいです。清潔そのものです。
これはいったい、いつの日の出来事なのでしょうか? 謎です。

■緊迫感の喪失
「緊張感は薄れたものの、主人公の人間表現は濃くなった」
こんなことを書いておられる人がいますが、とうてい、本気とも思えません。
どこかの家庭の問題を扱ったドラマであるならまだしも、日本の命運を描いた
「あの日」のドラマで、緊迫感を犠牲にして主人公の人間表現を採択する
ことはできません。それをやってしまったら、何のために、わざわざ「八月十五日」を
映画にするのか、その意味が無くなってしまいます。自己崩壊です。
だいたい、この映画の主人公って誰でしょうか? 阿南さんでしょうか?
岡本版でも、とりあえず役者の知名度などから、主演は三船敏郎(阿南)となっていますが、
それ以外のほとんどすべての役者が、確実に自分の主役場面を持ち、まれにみる
群像劇に仕上がっていました。高度なアンサンブル・キャストが実現していました。
原田版でいちばん痛感したのは、日本の役者の層の薄さでした。

■事実誤認

日本はポツダム宣言を受け入れ玉音放送も行われた、というゆるぎない事実があるのに、
何度観ても「無事放送されるのだろうか」と思わせてしまう圧倒的な歴史サスペンス劇で
あることにまず脱帽。

放送がなされるまでにはどれだけ多くの人々の労力(人命も)が費やされたか、
それぞれの立場の関係者がどんな思惑で動いたか、動かざるをえなかったか、
また動かなかったのか。
敗戦を認めいかにそれを国民に知らしめるか、というその1点だけを巡って
展開する2時間半強の長尺ながら寸分もだれることのない濃密な群像劇は贅沢、豊饒、
至福の「映画を観た」という満足感を十二分に味わわせてくれる。

作品の魅力は他のレビュアーさんが言い尽くしていると思う。
私から敢えて付け加えるなら、三船敏郎演じる阿南陸軍大臣の「いじらしさ」をあげたい。
演出による創作かもしれないが、徹底抗戦を望む陸軍の代表として本土決戦を主張しつつ、
かなわぬとなれば(当たり前なのだが…)将兵にとって名誉ある敗戦を迎えさせてやるため
最小限の猶予を求め、それもかなわぬとなれば暴発寸前の陸軍省の若手幹部を引き締めつつ、
最後の責任は自らの死をもって償う、という生き方。

陸軍トップでありながら、実は中間管理職的な一代表でしかなく、おそらく日本の敗北を
認めつつも、立場上それを正面から受け入れるわけにいかない苦悩にさいなまれながら、
堂々持論を展開し、拒絶されてもぐっと堪え(このあたりの表情が実にいい)、
辞職することもなく職を全うし、対立した首相に静かに別れを告げ退席する姿の美しさ。
汗みどろで絶叫、暴走する若手軍幹部たちの幼児的で視野狭窄な暑苦しさと見事な対比で
作品の重要な縦糸を支えている。

事実がそうであったかは知らない。時代から消え行く日本人の理想像のひとつとして
性格づけされたキャラクターを見事に演じる三船のうまさも再評価されてほしいと思う。

もうひとつ、開幕後、20分経ってようやくタイトルが出るこの重厚な演出!

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