楼蘭 (新潮文庫) の感想
参照データ
タイトル | 楼蘭 (新潮文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 井上 靖 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101063140 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文学賞受賞作家 » 芥川賞 » 1-25回 |
購入者の感想
大国漢と匈奴にはさまれた弱小国楼蘭の変遷を描く表題作他、西域に植民する後漢の武将索勱(そうばい)の姿を描く「洪水」、幻想的な「羅刹女国」など砂漠に人びとの運命を描く短篇と、織田信長を討つ明智光秀の心理に迫る「幽鬼」、極楽浄土信仰に巻きこまれる僧侶を見つめる「補陀落渡海記」など日本の古事に題材を取る短篇計12篇を収録。
運命の濁流に激しく、そして静かに対峙する人びとの姿にただただ感動します。力と力がぶつかり合う西域において、情勢にさとく反応しながら、それぞれの生をしたたかに生きる人びとの息づかいが聞こえてきそうです。
キリスト教的信仰とは無縁の西域で、運命、徳、他社との関係性の中で生を模索する視点は、肯定的な意味でも、否定的な意味でも、必ずキリスト教に回帰していく西洋文学に浸りきっていた私には非常に新鮮でした。井上氏が描く、運命にもまれながら自己を失わずに生を全うする人びとの姿には、不思議な説得力と魅力があります。とてもフィクションとは思えない生々しさが素晴らしい一冊です。
運命の濁流に激しく、そして静かに対峙する人びとの姿にただただ感動します。力と力がぶつかり合う西域において、情勢にさとく反応しながら、それぞれの生をしたたかに生きる人びとの息づかいが聞こえてきそうです。
キリスト教的信仰とは無縁の西域で、運命、徳、他社との関係性の中で生を模索する視点は、肯定的な意味でも、否定的な意味でも、必ずキリスト教に回帰していく西洋文学に浸りきっていた私には非常に新鮮でした。井上氏が描く、運命にもまれながら自己を失わずに生を全うする人びとの姿には、不思議な説得力と魅力があります。とてもフィクションとは思えない生々しさが素晴らしい一冊です。